「口パクNO!」は定例会見で質問に答えたもの。招致活動のため北京にジャンプ、開会式に出席した知事は「テレビに映った映像全部あれコンピューターグラフィックなんだってね。情けないというか、何ていうか、あの国ならではか、知りませんがね。嬉しい、楽しい、おめでたいってことは分かるけど、同じ中華料理3人前食わされるとうんざりするよな。長すぎた。口パクでも、花火を上空から撮ったあのシーンも、サッカレーの有名な小説の題名と同じだね」などと謎めいた言い方でダメ出しした。
英小説家ウィリアム・M・サッカレーの代表作「虚栄の市」を指しているとみられる。
イカサマ演出には中国内外から批判が噴出しており、12年ロンドン五輪を控える英メディアは「偽装五輪」(タイムズ紙)、「ロンドンでは健全な開会式を」(デーリー・テレグラフ紙)などと力説。見栄を張る必要はなかったとしている。
ただ、石原知事は微妙な立場にある。
もともとチベット問題を始め中国政府批判に舌鋒鋭い政治家として知られていたが、開会式後に「13億人の人口のすごさをひしひしと感じた」「体制に異論はあるが、ボランティアの学生がとても親切で礼儀正しく、若者が国家社会の前途に期待を持っていてうらやましい」などと感想を述べたため、中国メディアはこれを取り上げて「右翼分子の発言とは思えない。まるで中国の代弁者」と報じた。喜ぶべき変化と捉えているようだ。
一方では、さんざん批判してきた中国での五輪開会式に出席することなどを「変節」とし、反旗を翻した石原シンパの都議もいる。五輪招致には中国をはじめアジア各国の支援が不可欠で、微妙なかじ取りを迫られる。
こうしたなか、9年連続となる終戦記念日当日の参拝を済ませた石原知事は、その心境を「日本が衰運(盛運の反対語)に向かわんように」とだけ述べた。会見では、靖国参拝の質問を「またか。当たり前じゃないか行くの」とぴしゃり。招致活動への影響については「別に影響はないと思う。バカな質問しないほうがいいよ」などと猛烈にけん制した。
17日には再び訪中し、北京でのレセプションに出席予定だった。しかし、「夏風邪をこじらせ断食療養してますから勘弁させていただきます」とキャンセル。北京の開会式演出で東京五輪が実現したときにヒントになりそうなものは「ないね。全く違うことをやります」と言い放った。
本紙既報(10日付)の通り、北京の最終聖火ランナーがワイヤーアクションで空を飛んだのは、東京五輪の点火案で評価していた「空飛ぶ鉄腕アトム」とかぶった。意地でも似たような演出はできないということか。硬軟入り混じる石原知事に周囲はヤキモキさせられそうだ。
○福田首相にも痛烈なダメ出し
前半を折り返した北京五輪で最も印象に残ったのは、北島の2冠2連覇でも星野ジャパンでもなく、福田康夫首相だった。
「金メダルを取ってくれた選手には絶大な拍手を送りたい」と端的に述べたうえで、「開会式で心外だったのは、各国の最高指導者がそろう中、自国の選手団が来て手を振らなかったのはうちの総理大臣と北朝鮮の代表だけ。これはどういうことなのか」と激怒。
「帰国して新聞を読んだら『せいぜい頑張ってください』って言ったそうだな。“あんた限界があるから、まあ”って感じにしか取れない。総理大臣が選手にかける言葉と違う。そのせいか日本勢あんまり奮いませんな。せいぜい頑張っているけども」と皮肉たっぷりに批判した。
○北島のカラダはエロス
北島選手の活躍には「肉体だけじゃなしに精神もタフだ」と絶賛。
「男の涙を見せたくないから、タオルで顔ふくフリをして。美しいというか、感動的というか、ロゴス(理性)じゃなくてエロスの世界。肉体の美しさのね」と、その筋の人が聞いたらアブない発言だった。