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森永卓郎の「経済“千夜一夜”物語」 もう一つの忖度

 森友学園に国有地がタダ同然で払い下げられた事件は、安倍昭恵総理夫人に対して、財務省が忖度をしたのかどうかが、大きな焦点になっている。もちろん、財務省は忖度を全面否定しているから、真相究明は難しいかもしれない。
 ただ、私は安倍総理が追及されるべき忖度は、もう一つあると思う。それは、日銀による金融緩和の大幅な縮小だ。

 「トランプ相場」で活況を呈した日本の株式市場が、今年に入って低迷を続けている。
 3月27日には、一時1万8985円と、終値ベースでは2月9日以来の1万9000円割れとなった。原因は円高だ。トランプ相場で、昨年12月半ばに1ドル=120円近くまで円安に進んでいたのだが、3月27日には1ドル=110円と、じわじわと円高が進んでいるのだ。
 実は、これはおかしな事態だ。米国の連邦準備制度理事会のイエレン議長は、3月15日に記者会見し、米国の短期金利を0.25%引き上げて、0.75から1.00%にすると発表した。しかも、年内にあと2回利上げする方針だという。
 米国が利上げをすれば、ドルを欲しがる人が増えるために、ドルが高くなる。つまり円安が進むはずなのに、為替は逆の動きをしているということだ。それは一体なぜなのか。

 そこで、日本の動きをみると、驚くべき事実が浮かび上がる。
 現在、日銀は金融緩和のために年間80兆円の国債を買い入れることを目途にしている。トランプ大統領が誕生した昨年11月まで、日銀の国債保有増は、10カ月間の平均で7兆2314億円、年率になおすと実に87兆円だった。目標を上回るペースで国債を買っていたのだ。
 ところが、昨年11月から今年2月までの3カ月間の平均は、3兆4929億円、年率換算で42兆円となっている。つまり、金融緩和のペースが半減しているということだ。いったいなぜ、こんなことが起きているのだろうか。

 世界で最も早くトランプ大統領との会談を実現し、仲良く2人でゴルフまでした安倍総理だが、もしかしたら、為替を円高に誘導する、少なくとも円安にはしないという密約を結んだのではないだろうか。
 もともとトランプ大統領は、“日本と中国が通貨安を誘導して、それが米国企業の競争力を奪っている”という非難を繰り返していた。
 安倍総理や菅官房長官は、「日本の金融緩和は、物価目標達成のために行っているもので、円安誘導の目的はない」と反論したが、もちろんそれは建前だ。金融緩和に円安誘導効果があることは、誰もが知る経済理論の常識だからだ。

 当然ながら、金融政策は、日銀が政府から独立して決めることになっている。しかし、それも建前に過ぎない。
 日銀総裁の任命権は、政府が握っているのだから、日銀は政府の意向と異なる判断はできないのだ。それは、金融緩和を頑なに拒んできた白川方明前総裁から、いまの黒田東彦現総裁に代わった瞬間に、異次元金融緩和が始まったことからも明らかだろう。

 ただ、日銀の忖度によって金融緩和が封じられたのだとすれば、デフレの再来で、アベノミクスの失速は確実だ。

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