もともと中日ドラゴンズOBの星野氏と愛知県出身のイチローは良好な関係にあり、コンビは組みやすいという背景もある。この動きに拍車を掛けているのが、パ・リーグという“商品力”の急騰だ。
“パ強セ弱”現象の頂点を極めたのが6月23日。その日、巨人と阪神がセ・リーグ首位に並んだのだが、勝率はともにちょうど5割。60試合を消化した時点でリーグの全チームが「貯金0」というのはプロ野球史上初の珍事となった。翌24日に阪神が「貯金1」で単独首位に躍り出たが、その阪神はチーム打率、チーム防御率の両方がリーグワースト。いかにセが劣化しているかがわかる。
それもこれも、交流戦でパに「借金17」したことが原因。リーグ間にこれだけ実力差があると、当然、摩擦が生じる。毎年、オールスター期間中にオーナー会議が開かれるが、早くも「来年以降の日本シリーズの存続」を危ぶむ声まで出ているという。
「パがセを実力で凌駕しているのが明白な以上、日本シリーズを開催する意味がないというのです。パにすればリーグ優勝を果たせば、それが“日本一”を手にしたのと同じ意味を持つ。そこでリーグ上位3チームがそれぞれ出場するクライマックスシリーズを“公式戦とは別物”と位置づけ、アジア・シリーズ→リアルワールドシリーズ(世界一決定戦)の日本予選にしようというのです」(スポーツ紙記者)
これまではセの人気にぶら下がる形で存在してきたパが、人気も逆転しつつあることで見事な手のひら返し。今度はこっちから袂を分かつというのだ。
この“日本予選”にしてもセとパでは温度差がある。
「実力が低下しているセは、2020年東京五輪の復活デモンストレーションを目的に韓国、台湾、中国、豪州、欧州と連携してメジャーリーグのワールドシリーズに対抗する世界選手権の設立を思い描いている。一方、パは単独でメジャーのワールドシリーズ地区予選に加わろうとしている。そのためにもイチローの日本復帰はリーグを挙げて歓迎。大低迷でメンツ丸つぶれの宮内氏にすれば、20年ぶりのリーグ優勝よりワールドチャンピオンで溜飲を下げたい。これが本音でしょう」(同)
41歳のイチローの目下の目標は「メジャー通算3000安打」にある。6月29日現在でメジャー通算2886安打を記録し、史上30人目となる通算3000安打にあと114本と迫ってきた。しかし、1試合1打席の代打が中心では今シーズン中の達成は難しく、早くても来シーズンまでかかる。それを見込んでか、マーリンズはイチローとの契約を最大2017年まで延長する方針というが、そうすんなりいきそうにない。
マーリンズはナ・リーグ東地区で最下位争いをしており、しかもイチローは“4番目の外野手”。古巣シアトル・マリナーズのファンからは「来年移籍してウチで3000本安打を」というラブコールもあり、マイアミでじっとその時を待つとは思えない。
「それより、50歳までプレーしてピート・ローズの記録を超えたい、とイチローは親しいメディア関係者に話しています。メジャーの代打稼業より、日本に戻ってフルにプレーしたいと。これまでは、今さら日本復帰では彼のプライドが許さないとみられていたが、監督兼任なら話は違う。オリックスならDHもある。自分の体と相談しながら自分の考えでプレーすることで“ローズ超え”を思い描いているようです」(メジャー担当のテレビ局スタッフ)
一方、星野仙一氏は今季から5年総額5億円で東北楽天ゴールデンイーグルスのシニアアドバイザーに就任。球場には特別室が設けられ“院政”を敷いていた。だが、三木谷浩史オーナーがデータ解析の専門家・山本一郎氏を“チーム戦略室アドバイザー”として球団に送り込んできた。
年俸を約束されている星野氏が一歩下がれば済む話だったが「野球経験のないパソコン屋に何がわかる」と反発。両者の関係は一触即発で、しかも山本氏は本業に忙しい三木谷オーナーに代わって実質チーム管理をしており、球団内では星野氏がケツをまくるのは時間の問題とみられている。
そこを狙ってくるのがオリックスだ。宮内氏は、三木谷氏からすれば政商としても、球団オーナーとしても大先輩。オリックスが星野氏を“強奪”にきても、そうそう拒めないだろう。
「三木谷氏も、身内で揉めるより、すんなり星野氏を引き渡したほうが得策だと考えるかもしれません」(前出のテレビ局スタッフ)
星野GM&イチロー監督が実現すれば、宮内氏の球界支配も夢じゃない!?