太平洋への進出は外洋型の海軍を目指す中国にとっては最も重要であり、そのためには次の4つのルートを通って、太平洋に抜けなくてはならない。①日本海からオホーツク海を経由して太平洋に抜けるルート。②日本海から津軽海峡を抜けて、太平洋に出るルート。③沖縄県の宮古島と沖縄本島の間の広い海域を抜けるルート。④台湾海峡を抜け、南シナ海を経由して、太平洋に抜けるルートだ。
このうち、中国にとって、沿岸国を刺激せず、迂回せずに太平洋に出られるのは、③の沖縄本島と宮古島の間を抜けて行くルートしかない。そして、そのルートの入り口近くに尖閣諸島がある。つまり、中国が沖縄県の一部の領有を主張する背景には、太平洋進出の拠点を確保しようとする軍事的思惑があることは間違いない。
問題はもう一つある。中国紙に同国の空母『遼寧号』の維持費について紹介する記事が掲載され、かかる費用についての説明がなされた。
「ロシアの専門家は『002型空母の建設費用は700億元(約1兆1900億円)に達する可能性がある』と分析していますが、記事は『これは少々誇張した金額で、控えめに見積もって300億元(約5100億円)ほどだろう』と予測しています。1回の航海が1カ月ほどであった場合、燃料費だけで6000万元ほど(約10億2000万円)になり、『このような費用を負担できる国がどれほどあるだろうか』と嘆いています」(軍事ジャーナリスト)
空母にかかる費用は空母の燃料費だけではない。艦載機の燃料、乗組員の食費やその他の日常の維持費も加わり、その額は莫大になる。
「米国のニミッツ級空母の場合、年間140億元(約2380億円)かかるといわれており、30年間就役すると、その額は4200億元(約7兆1400億円)にもなります。しかも、空母は1隻で出航するわけではなく、空母艦隊を編成して十数隻の船が連なるため、これらの燃料費や維持費を加えると、1空母艦隊で年間少なくとも200億元(約3400億円)はかかります。中国にとっては『金食い虫』以外の何物でもありません」(同)
バカでかい体にはそれに合った食糧費が必要ということだ。「前門の沖縄、後門の金食い虫」が中国海軍の弱点だ。