千葉県松戸市立六実第二小学校に通う3年生で、ベトナム国籍のレェ・ティ・ニャット・リンさん(9)の全裸遺体が、同県我孫子市の排水路脇の草むらで発見された事件。その結末は、リンさんの自宅近所に住み、同小学校の保護者会会長でもあった男が逮捕されるという、衝撃的なものだった。冒頭の発言は、4月14日に死体遺棄容疑で逮捕(15日に同容疑で送検)されたその男、澁谷恭正容疑者(46)が以前に勤めていた、料理店店主の話である。
「逮捕後、澁谷容疑者はダンマリを決め込んでいたが、3月24日の朝、澁谷容疑者の自宅から約150メートル離れた駐車場に停めてあったキャンピングカーにリンさんと乗り込む姿を、防犯カメラやドライブレコーダーが捉えている。同日夜には、遺棄現場付近と、さらに、そこから約30キロ離れた茨城県坂東市を流れる利根川の河川敷付近、つまりランドセルや衣服が捨てられていた場所の防犯カメラ映像にも、澁谷容疑者の軽自動車が映っていた。登校するために自宅を出た直後のリンさんを狙って軽自動車で連れ去り、キャンピングカーに連れ込んだ可能性が高い」(捜査関係者)
このキャンピングカーについては、澁谷容疑者が約5年前から現在の駐車場を使用しており、「動かしているところは見たことがないが、時折(澁谷容疑者が)やって来ては車内で過ごしていた」(近隣住民)という話もある。リンさんの死因は首を絞められたことによる窒息死の可能性が高いというが、車内で何があったのかは、いまだ不明だ。
澁谷容疑者は松戸市内で生まれ育ち、リンさんと同様、六実第二小学校に通い、地元の中学校へ進学した。
「中学時代のあだ名は“シブ”。柔道部で体がデカくて、よく冗談も言うし、みんなに好かれていましたよ。卒業後は千葉の県立高校に進学して、調理師の資格を取ると言って専門学校へ入学したんです。でも、途中で退学してしまい、松戸の飲食店に見習いとして働いていた時期もありました。その後は札幌へ行って、やはり飲食店の厨房で働いていたと聞いています」(中学の同級生)
千葉県に戻ったのは10数年前。それまで飲食店を転々としていたのとは打って変わり、今度は松戸市内でコンビニ店員や宅配便の運転手を始めたという。
「ただ、運転手の仕事も、いつの間にか辞めていましたよ。あの家は澁谷容疑者のお爺さんの代が運送業などで財をなし、周辺の土地を手に入れて相当な資産家になったんです。しかし、6年ほど前までに、父母、姉を次々と亡くして、その資産を1人残った彼が相続することになった。いま住んでいるマンションと、ほか3棟のマンションのオーナーで、それらの運用でずいぶん楽な暮らしをしていたようです」(澁谷容疑者を知る人物)
その間、澁谷容疑者には結婚歴もある。
「約10年前に結婚して子供を2人もうけている。奥さんは小柄で、可愛い感じの東南アジア系の外国人の女性と聞いています。それでも数年前に離婚して、子供は澁谷容疑者が引き取った。2年ほど前からは内縁関係の女性と、4人で生活していたんです」(同)
そんな折、昨年4月から同小学校の保護者会「二小会」の会長を務め始めた澁谷容疑者は、6月以降、少年補導員にもなり、地域活動の中心人物でもあったという。
しかし、学校周辺からはこんな話も聞こえてくる。
「それまで『二小会』会長は女性が務めていたことから、自ら手を上げて就任した澁谷容疑者について、『空気が読めない人』、『単なる目立ちたがり屋』といった声も上がっていましたよ。子供たちに対しては、女子生徒には優しく接するけど、男子生徒には怒鳴りつける姿も度々目撃されていて、その変わりようも噂になっていたんです」
3月26日にリンさんが遺体で発見された後も、澁谷容疑者は子供たちの登下校を見守る活動を続けていた。だが、事件発生を受け、翌日に行われた臨時保護者会では一言も発せず、出席した保護者の間では「いつも積極的に発言するのに様子がおかしい」と話題になっていたという。
学校周辺関係者は、逮捕前の澁谷容疑者の様子について、こうも語る。
「3月31日に行われたリンちゃんのお別れ会には、子供のインフルエンザを理由に出席していません。4月に入ってからは、5日、『二小会』での保護者たちの提案により、リンちゃんの遺族の渡航費用を援助したいという文書を、澁谷会長名で出して寄付を呼びかけたのですが、肝心の澁谷容疑者があまり関心を示さなかった。学校内で澁谷容疑者がリンちゃんと親しげに話す様子を見掛けていたし、知らないはずはない。だから変だな、とは話していたんです」
子供たちを守る立場を装い、リンさんに接近したのか。
いずれにせよ、同年代の子を持つ父親の歪んだ性欲晴らしの犯行だったとすれば、あまりに悍ましい。