(第一話)日本各地で露天商をして生計を立てている、流れ者・フーテンの寅こと車寅次郎(渥美清)。ある日ふらりと20年前に家出した東京葛飾柴又、帝釈天の門前にある実家に戻ってくる。そこには死んだ父の兄弟であるおいちゃん、おばちゃん夫婦が草団子屋を営み、今では立派なキーパンチャー(OL)となって働く、腹違いの妹・さくら(長山藍子)が暮らしていた。突然帰宅し、テキヤの仲間たちと酒を飲んで騒ぐ兄にさくらは不満を募らせるが…。
(最終回)様々な騒動を起こした末、さくらの結婚が決まり、またフーテンの旅に出た寅次郎。子分の源公(佐藤蛾次郎)と共にハブを捕って一儲けしようと南の島へ向かうが…。
BS放送などで初回と最終回のみを放送していたりするけど、今ドラマ版の『男はつらいよ』を全部見るには、やはりDVDを買うなりして見るしかないみたい。とにかくスタートからかなり大迷惑な寅さん。まだ若かったし、無鉄砲なハブ捕りに出かける設定はありがちだわ。その後30年もシリーズが続いてしまい、少々時代おくれになってるけど、おなじみの帽子腹巻にトランクのファッション・スタイルはこのドラマで既に確立。渥美ご本人が歌う主題歌もあのままね。定職に就かず、露天商や儲け話に乗ってあちこち出かける流れ者=ヤクザみたいな自分を「カタギでないアニキ」といい、さくらやみんなに迷惑をかけると気にする寅さん。自分勝手で奔放なわりには気が弱くて、好きな女性がいてもアタックできない。実は寅さんは元祖草食系男子だったの。でもこの「好きでもヤボな事は言わない」は、日本人男性の美徳でもあるのよね。ま、30年後の映画で浅丘ルリ子のリリィに「恋はどこかみっともないものなんだよ!」って怒られるまで寅さんの草食系は続くのだけれど…。
それから「それをいっちゃあ、おしまいよ」の威力も忘れちゃいけない。
これはまわりの人がネガティブな事を言ったり、やる気を無くしたり、つまらない事で争ったりすると寅さんの口をついて出てくる決め台詞。ちなみに、寅さんはテキヤ仲間や嫌いな人間にこの言葉を言うことはほとんどなく、どちらかというとまっとうな生活を送るべくカタギの人に言う事が多い。明日の生活もままならないフーテンの俺さえも希望持って生きているのに、カタギのお前がなんだ。死ぬ気で頑張れば何でもできるじゃないか。というメッセージが込められ、普段遊び人風の寅さんが言うとかなりの破壊力がある。日本中の心が沈んでピリピリしている今だからこそ、寅さんのこの言葉が身に沁みるわ。みんな、寅さんの笑顔を思い出して、どんな時も希望を持っていきましょうね!(チャッピー)