「フリー打撃では鋭い打球を連発しており、打撃面は完全復活したと言っていいでしょう。だけど、全力疾走できるのかどうか…。指名打者なら守備につかない分、怪我をした足への負担は軽減できるが、打てば、一塁まで走らなければならない。力を入れた瞬間、また再発してしまうかもしれないし」(スポーツ紙記者)
ペナントレースが再開した6月23日、栗山監督は大谷の起用を見送った。代打でも打席に立たせなかったのは、取材陣も指摘するように、「一塁まで全力疾走したときの懸念」が払拭できなかったからだが、「斎藤を見習え」とはどういうことか。
「実に理に適ったエールです。斎藤の長所はマイペースなところ。周囲の批判が強くても、絶対に自分を変えません」(球界関係者)
マイペース…。斎藤は昨年オフ、「どうして契約更新できるんだ!?」と日ハム贔屓のファンも疑問に思うくらいだった。「今季勝てなければ…」の危機意識は持っていたようだが、普通の選手なら“焦る”。だが、当の斎藤はキャンプ、オープン戦でもマイペースを貫き、5月31日、約2年ぶりの勝ち星を掴んだ。このとき、チーム内から出た言葉は「普通の選手なら、とっくに辞めている」だった。
「とにかく、斎藤に対する批判、酷評は止みませんでした。でも、オフからペナントレース本番までの間を計算し、焦らずに仕上げ、勝ち星につなげました。周りに左右されない精神力は並大抵ではない」(同)
大谷は違った。春先に右足の踵周辺を痛め、WBCを辞退した。左足太もも裏の肉離れは右足をかばって全力疾走した代償でもある。
「WBC辞退の引け目が大谷に強い責任感を与えました。右足の痛みを抱えながらも必死にプレーし、WBCを辞退した分を少しでもファンに返そうと頑張り過ぎたのです。結果、長期欠場するハメになってしまいました」(同)
図太さ、いや、“斎藤の精神力”があれば、長期欠場には至らなかったわけだ。試合に復帰する時期は栗山監督に一任されたが、大谷にはさらに無理をさせる可能性が出てきた。
「大谷はオールスター戦のDH部門でダントツの1位。出場は確実です。故障を理由に欠場することもできますが、ズル休みと解釈されれば、後半戦はペナルティーで何試合か出場できなくなります」(前出・記者)
責任感の強い大谷は、球宴でも全力プレーするはずだ。そこで怪我がぶり返せば、球界にとって大打撃。かといって、温存させれば、早く試合に復帰したいとし、必死に練習している姿からすれば、ズル休みの疑惑は免れない。
いろいろ“持っている”斎藤に学び、早く活躍する姿が見たい。