高津ヤクルトが“初ヒット”で掴んだ好機を生かし、サラナラ勝ちした(10月7日)。こういう勝ち方はチームの士気をさらに高める。劇的な幕切れとなったこの一戦だが、敗れた巨人も不振脱出の糸口を掴んだのではないだろうか。
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「エースが相手打線を抑え込み、4番が打って、そんな勝ち方をしないと、チームは不振から脱出できません」(プロ野球解説者)
試合前、低迷する巨人の戦況をそう指摘する声も多く聞かれた。
そんな風に言われた理由は、エース・菅野智之投手が先発したからで、4番・岡本和真選手も「ここ5試合15打数2安打」と不振に陥っていたからだ。
試合のキーマンとなったのは、やはり菅野だった。6回までのノーヒット、四死球で得点圏まで走者を進めたが、直球のキレ、スピード、変化球の鋭さは間違いなく、今季一番の出来だった。
しかし、7回のヤクルトの攻撃が始まる前の投球練習中に右手親指をつり、降板となったのは既報通りだ。
「菅野はエースの自覚が強い。一度マウンドに上がったら、そのイニングを投げきろうとする責任感があり、そんな性格の菅野がアッサリ降板したので、『重症か?』と思いました」(前出・同)
一旦はベンチ裏に下がったが、10分ほど経つと、またベンチに戻ってきた。他選手と一緒に緊急登板となったデラロサにエールを送っていた。この様子を見て、「交代させなくても良かったのでは?」と感じた取材陣も少なくなかった。
関係者の一人がこう反論する。
「この時点でのスコアは『0対0』。大事を取っての降板でしたが、エースが先取点を奪われるのを嫌がったんだと思います。親指をつって、急に調子が悪くなったら…」
同日の菅野の好調さは、守っている野手たちにも伝わっていた。この雰囲気を「次の登板」まで取っておくことにしたわけだ。
その後、ノーヒット継投が続いたが、9回裏一死からヤクルト打線にようやく“一本”が出て、サヨナラ勝ち。その走者を生還させてしまった2本目のヒット、ショートへの内野安打を指して、巨人、ヤクルト両陣営から対照的な声も聞かれた。
決して、良い当たりではなかった。ヤクルト側は山田の全力疾走が“一塁手の捕球ミス”を呼んだと言う。
「一塁を守っていたのは、途中から一塁に回った若林晃弘。中島、ウィーラーなどの一塁を守り慣れた選手なら捕っていたかも。無得点の引き分けで終わっていたのに…」
先の関係者のコメントだ。野球に「もしも」はないが、そう捉えた取材陣も少なくなかった。
「いや、坂本だから、あの打球に追いつき、一塁に送球できたんです。負けたくないとするキャプテンの意地が、際どいプレーにつながった」巨人サイドの言葉だ。
アウトになっていたら、好プレー。好プレーとミスは紙一重と言うが、まさにその通りとなった。エースが不本意な降板をし、キャプテンの好プレーが裏目に出た。坂本の存在感の大きさは説明するまでもないが、積極的に動いて負けたのなら、次につながるのでは?
いや、エースが投げて勝ち星につながらず、4番はノーヒット、キャプテンがチームを救えなかった痛手は大きいと指摘する声も聞かれた。ただ一つ言えるのは、この敗戦について誰も責めることはできないということだ。(スポーツライター・飯山満)