しかし、体調を整え、健康・長寿を促進する最良の効果がある一方で、「垢を落とし、体が温まればそれでよし」と、自分の体調を考えず誤った入り方をすると、脳卒中や心筋梗塞など大きな病気を引き起こす。最悪、その場で死に至るケースさえあるのだ。今回はそんな誤った入浴を改め、「いい湯だなぁ」を実感しながら健康で幸せな生活を送るための正しい浸かり方をお伝えしよう。
寒い日が続くと、温泉が恋しくなる。温泉に入ると体がよく温まり、入浴後も長くポカポカする感じがして気持ちも癒される。だがそうは言うものの、忙しく仕事に追われる人にとって、温泉に入る機会はなかなか作れない。しかし、真水を沸かした「さら湯」や家庭風呂でも、温度を高くすれば体は十分に温まり、入浴剤などを入れれば温泉気分も味わえる。それだけでなく神経痛やリウマチだけでなく、血流を良くして疲労を取り除き、生活習慣病の改善にもつながる。
湯の中では水圧によって体が押されるので心臓が良く働き、血液の流れが促されるほか、浮力によるリラックス効果もあるため入浴効果は満点だ。
たとえば、入浴によって体温が38℃になると、何十万種類もある体内のタンパク質の一つである「ヒートショックプロテイン(HSP)」が、細胞中の他の壊れたタンパク質を修復する大きな働きをする。つまり、疲れきった体を元気な状態に戻すなど、重要な作業が行われるのだ。このHSPを増やすには体を温めることが求められ、その最も簡単な手段が入浴というわけである。
自らを温泉大好き人間という、大学病院の栄養管理士で料理研究家・林康子氏は、「お風呂に入ることは、健康維持に効果的で、毎日でも続けてほしいくらいです」と説明する。
「温かいお湯に浸ると体温が上昇し、毛細血管を拡張させ血液の循環を良くします。新陳代謝が活発になり、体内にある老廃物を汗と一緒に排出しますし、それだけで体調が良くなるはずです。血流が良くなる仕組みをいえば、お湯に溶け込んだ二酸化炭素が皮膚から血管内に入ります。すでに血中にある二酸化炭素は、いわば毒(老廃物)なので、体が早く排出しようとするので血流が増えると考えられています。またHSPも、体温が38℃ぐらいになると約1.5倍、38.5℃で2倍に増えるというデータもあります。体内温を38℃以上にするには、41〜42度に高めた湯に肩まで浸かり、芯まで温まることが肝要です」
入浴効果は、体が温まることで体内に溜まった老廃物を排出。さらに、HSPが失ったタンパク質(酵素、コラーゲン、筋肉など)を修復し、風邪から生活習慣病までさまざまな体の不調を改善するといわれている。
「とくにストレスが多く、原因不明な体調不良が増える40歳以上の人には入浴は効果的で、お勧めします」(同)