A:歯ぎしりは、歯科では噛み合わせの異常が原因で起こると考えられてきました。噛み合わせに異常があると、脳のほうでそれを正常に戻そうとする働きが自然に生じます。それが咀嚼筋に伝わると食いしばりが起こり、歯ぎしりの原因となるというわけです。
また、それが長期化すると顎関節症を発症し、より歯ぎしりが強く起こるようになります。
精神的ストレスも、噛み合わせの異常の有無に関係なく、歯ぎしりを引き起こす単独の要因となるという見方もあります。しかし、それを証明する研究やデータはないようです。
さらに、逆流性食道炎の患者さんに胃酸の分泌を抑える薬を処方すると、就寝中の歯ぎしりが減るケースがあるとか。そのため最近では、逆流性食道炎が歯ぎしりの原因ではないかとの見方もあるようです。
つまり、この場合は代償作用としての歯ぎしりというのです。歯ぎしりは以前から、脳のストレスを解消しようとする作用だという見方がありました。噛み合わせに異常があることに関しても、その歪みを矯正しようとする行為だとみなされています。
●まずは噛み合わせのチェックを
歯ぎしりは歯に相当な力をかけるため、起床したときに顎がだるい、さらには肩が凝っているということもあるようです。また、歯ぎしりをしている間は睡眠が浅くなるので睡眠不足に陥る場合もあるでしょう。
では、どのように対策すればよいでしょうか。基本的なこととしては、まず歯科医師を受診し、噛み合わせのチェックをしてもらい、噛み合わせの異常があればそれを治してもらいましょう。
噛み合わせを正しくしても顎関節症が治らないこともあります。その場合、マウスピースを装着することがありますが、それでも治らないこともあります。理由としては、全身の骨格(の歪み)やメンタルな面(精神的ストレス)が影響していると考えられます。骨格に関しては、整体や柔道整復などの専門家に診てもらうとよいでしょう。精神的ストレスには、私の医院では漢方薬を処方しています。
渡辺秀司氏(とつかグリーン歯科医院院長、漢方歯科医学研究所所長)
神奈川歯科大学卒。同大学研修医を経て、横浜市でとつかグリーン歯科医院を開設。歯学博士。歯科領域に漢方を取り入れ、天然素材を配合したうがい薬や歯磨き剤を開発。独自な歯周病治療で名高い。