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森永卓郎の「経済“千夜一夜”物語」 永遠の命を得たポケモン

 『ポケモンGO』の大ヒットで、任天堂の株式時価総額がたった1カ月で2兆円も増えた。
 『ポケモンGO』のアイテムが手に入ったり、対戦ができるスポットとなったマクドナルドも株価が上昇した。さらには、スマホの電池消耗が激しいということで、予備バッテリーを販売する会社や通信量が増える携帯電話会社の株価も上昇するなど、世間の関心が“ポケモノミクス”に集中している。
 しかし、『ポケモンGO』がもたらす最大の効果は、ほとんど指摘されていないと私は思う。それは、ポケモンが瀕死の重傷から立ち直り、永遠の命を持ったということだ。

 実は、ポケモンの人気は緩やかに下降していた。それは当然の話だ。ゲームボーイのポケットモンスターが登場したのは、1996年、いまからちょうど30年前になる。当時、ポケモンに熱中した子供たちも、すっかり大人になり、すでにゲームから遠ざかっている。となれば、ポケモンのグッズも売れなくなるし、関連イベントにも人が入らなくなる。会社の寿命は30年と言われるが、キャラクターの寿命も普通は30年なのだ。
 ところが、今回の『ポケモンGO』の大ヒットで、ポケモンはあらゆるメディアに露出し、再び世間の注目を集めた。『ポケモンGO』は、小学生以下はプレー禁止ということになっているが、親たちがはまれば、当然、子供たちのポケモンに対する関心も高まる。そうなると、ポケモンというキャラクターが新しい世代に受け継がれることになるのだ。

 実は重要な先例がある。それがウルトラマンだ。ウルトラマンは今年、50周年を迎えた。ウルトラマンというヒーローは、画期的なキャラクターだった。それまで怪獣を退治するのは、基本的には人間だったが、宇宙人のウルトラマンが仮の姿で地球に住み、地球がピンチになると本来の姿を取り戻して巨大化し、怪獣をやっつけてくれる。そのコンセプトはとても斬新だったし、ウルトラマンのデザインやスペシウム光線も、子供たちを夢中にさせた。
 ところが、その画期的なヒーローであるウルトラマンでさえ、時間が経つと人気が衰えてくる。
 その流れの中で、製作をする円谷プロダクションも経営危機に陥った。それを救ったのは、'79年に映画『ウルトラマン怪獣大決戦』が大ヒットしたことだった。この映画は、テレビ版のウルトラマンを再編集したオムニバスだった。つまり、お金を掛けずに過去の作品をつぎはぎしただけの作品だったのだが、これが子供たちに大受けした。やはり、ウルトラマンが生み出したキャラクターは強かったのだ。

 私は、今回の『ポケモンGO』の果たす役割は、この映画『ウルトラマン怪獣大決戦』と同じだと思っている。これで、ポケモンは永遠の命を獲得し、世界で活躍し続ける基盤が作られたのだ。
 ポケモンの未来の姿は、ミッキーマウスのような存在になることだろう。だから、ポケモン初期のフィギュアやグッズを持っている人たちは、大切に保管しておいたほうがよい。いまや、初期のミッキーマウスのグッズは、考えられないような高値で取引されているからだ。

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