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奈良の神社話その十六 葛城山に座す“死を操る”神──御所市・高鴨神社

 葛城山麓は古代豪族・鴨族発祥の地だ。ここに鎮座する高鴨神社の祭神は「死した神をも甦らせる」という。

 全国の加茂(賀茂・鴨)社の元宮とされる高鴨神社。上鴨社とも呼ばれ、周辺に点在する中鴨社こと葛木御歳(かつらぎみとし)神社、下鴨社こと鴨都波(かもつば)神社と合わせて“鴨社三社”の一つといわれる。祭神は『延喜式』に高鴨神社四座とあり、大国主命の御子・阿遅志貴高日子根命(あぢしきたかひこねのみこと)他四座を祀る。

 『古事記』にはまたの名を迦毛(かも)大御神と記されている。『記』で“大御神”と称されるのは天照大御神、伊邪那岐大御神の三神のみ。それゆえ平安遷都後も朝廷の尊崇は続き、疫病が流行するなど国家の大事には幣帛が奉られた。

 この祭神には不思議な逸話が残されている。
 高天原からの使者として地上に赴いた天稚彦命(あめのわかひこのみこと)は国譲りの使命を果たさず、自ら天に放った矢で落命してしまう。阿遅志貴高日子根命は義理の弟であり友であった天稚彦命の弔いに赴くのだが、「その時この神の容貌(かおかたち)は天稚彦命の生前の容貌そのままで、親族妻子はみな我が君が生きておられたと泣いた」と『記紀』は語る。
 「死した神々をも甦らせる」と信仰される所以である。

 「七度生まれ変わって国に報いん」と誓ったとされる楠木正成は、武運長久を祈って度々当神社へ参拝したという。「再生復活の神」に歴史に名高き武将は“不死身”になぞらえ、永久の忠誠を祈願したのだろうか。

 当神社は日本さくら草の栽培でも有名。4月下旬頃には境内に現存している品種約500余種が咲競う。清楚で可憐な姿に足を止め、ほっと一息ついてみたい。

(写真「朱塗りの本殿(重文)と拝殿」)
神社ライター 宮家美樹

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