ブエナビスタの3冠を打ち砕いたのは、やはりレッドディザイアだった。
今回は差し届かず2着に終わったローズSの教訓を生かし、中団にポジションを取る積極的な戦法を取った。前半の時点で「ブエナビスタより絶対先に仕掛ける」ことがヒシヒシと伝わってくる攻撃的な姿勢。結局、これが最後のハナ差につながった。四位騎手が振り返る。
「負けたらまた(後ろからいく)元の乗り方に戻せばいいと思っていた。相手を意識せずに、攻めの競馬で乗ろうと。イメージ通りに運べた」
もちろん、「今思えば手ぬるい仕上げだった」(松永幹調教師)トライアルから、さらにもう一段階上の状態に持っていった松永幹調教師の手腕も称賛されてしかるべきだ。四位騎手も「厩舎が一丸となったこん身の仕上げだった」と絶賛する。
馬体は前回からマイナス14キロとまさに究極の仕上げ。ここまで馬をいじめられたのは前回の敗北だったと指揮官は話す。
「負けた(2着)おかげでしっかりやれた。いま振り返るとあそこで負けておいてよかったんだと思う」
今までケイコは坂路中心だったが、この中間はWコースを長めに乗るなど、攻めに攻め抜いた。終いサラッとが通常な牝馬の直前追い(坂路)でも一杯にしごいた。
現役時代、ミッキースマイルと評され、調教師になった今でも誰にでも愛くるしい笑顔を振りまく青年トレーナーが、今回ばかりは打倒ブエナへ心を鬼にした。
レッドディザイアの今後についても松永幹師は攻めの姿勢を崩さない。「あくまでオーナーと相談してからだけど、次もブエナビスタが使うレースを使いたい。もう1回勝たないことにはね」と不敵な笑みを浮かべる。
可能性が高いのがエリザベス女王杯での4度目の対決。名勝負の“数え歌”はまだ始まったばかりだ。