「犯人が、大相撲の有名な親方の息子というのは、事情説明で訪れた警察で聞きました。確かに、ムキムキではないですけど、背も高めで、ガタイも良かったです。そこに黒縁メガネ、ズボンには白いパンツ、頭にはハンチング帽。まさに『ザ・業界人』といった感じで、マネジャーさんそのものでした。腰も低くて、最初声をかけられたときに、『谷さんとわかっていたら、声をかけませんでした。本当にすみません』って。いま考えても上手ですよね」
谷桃子自身の被害総額は、およそ10万円。それだけの大金を持っていたのにも、さまざまな理由があった。
「バッグの中には、現金およそ6万円と、お化粧の道具などが入っていました。携帯電話だけはポケットに入れていたので助かりましたけど。私、普段はそんな大金を持ち歩かないんですが、その日は衣装代と、公共料金分をおろしていたので。あとは血圧の高いウチの両親に、手に巻く血圧計を買ってあげようかなと思って。でも、いちばん怖いと思ったのは、自分の住所を書いた手帳と家の鍵とのセットごと盗られたのが…。家の鍵は翌朝、交換してもらいました。そこまで合わせると、10万円では済まないですね。でもそれより、犯人が逮捕時も私の献血手帳を持っていたことを、警察でも不思議だって言ってました」
テレビでは「破天荒アイドル」というキャラで、はち切れた姿も見せる谷桃子。だが、今回の事件以降、食べ物もろくにのどを通らず、憔悴しきった様子が窺えた。
「みんなからは、やつれたって言われます。キャラ的に、おいしいなとは、まだ気持ちに余裕がないので…。事件後、心配かけられないからと親にも言えない、ブログにも書けない。そんな中で取り調べに協力するうち、精神的に参っていたんでしょうね。でも、犯人も逮捕されたので、番組で話をふられても明るく返したいし、被害金額を取り返すよう競馬を頑張ります!」
谷は、最後にはテレビで見せる笑顔を取り戻したが、「みんなも気をつけなければというのが伝われば嬉しい」と、被害者の視点から警鐘を鳴らすことも忘れなかった。