適合球が使用された同日の巨人対ヤクルト戦(東京ドーム)を観戦したスポーツライター・飯山満氏がこう言う。
「9回裏、巨人のアンダーソンの放った弾丸ライナーを、ヤクルト中堅手の雄平は追い掛けようともしませんでした。サヨナラホームランだと思って、諦めたんです。でも、打球はホームランにはならず、フェンスを直撃しました。僅か『0.005』の違いが試合展開を変えてしまった」
統一球の製造会社であるミズノによれば、上限超えの原因は「中国の製造工場が湿度管理を怠り、ボール中心部のゴムで作られた芯を巻くウール糸が乾燥したため」だという。統一球の失態は13年に続いて2年連続となるが、こんな指摘も聞かれた。
「統一球が導入される2010年までは、ミズノ、久保田、アシックス、ゼットの4社がNPB公式球を製造し、年間2万4000ダースを厳重管理してきました。4社で分散していた管理義務の負担をミズノ1社に負わせたわけですから、同情すべきところもある」(球界関係者)
そもそも、統一球なるものが造られた理由は、WBCなどの国際試合で選手が嘆いていた海外使用球との違和感を解消するためだった。製造元の違いによる誤差にも配慮し、『1社独占』となったが、16年シーズン以降の統一球供給メーカーは『オープンコンペティション』によって決められるという。
「前回も入札によってミズノが選ばれましたが、国内メーカーに限定されたものでした。統一球が導入された11年シーズンから2年契約を交わし、契約延長で現在に至っています。ただ、次回の新たな入札には海外メーカーも参入できることが決まりました」(前出・同)
参入が確実視されているのが、米・ローリングス社だ。同社はMLBの公式球やWBC公認球を製造しており、ミズノが不手際を招いた大量生産や厳重管理にも、米球界で実績を持っている。NPB内にもこの“黒船襲来”を既成事実のように捉える向きもあるが、もっとも大切なのは、統一球に対する不信感を払拭することだ。
「統一球の名称も変更するかもしれません。候補になっているのが、『国際球』と『適合球』で、ボール検査の信頼を取り戻すため、ビッグネームにも一肌脱いでもらおう、と」(在京球団職員)
12球団が絶大な信頼を寄せる大物といえば、王貞治・ソフトバンク会長か、長嶋茂雄・巨人終身名誉監督だろう。この2人がボール検査に立ち会うとすれば、『ONボール』のニックネームもつけられるかもしれない。