ススキ提灯とは二間半(約4.5メートル)の竹製の支柱に横木を通し、上から2・4・4の合計10張の高提灯を吊るしたもの。積み藁(稲積み)の形を「ススキ」「スズキ」と称するところは多いが、ここでは積み藁に見立てた提灯そのものがススキだ。積み藁が現すのは穀霊、すなわち稲魂(いなだま)で、敬い、祀ることで五穀豊穣を祈願する。
薄暮に包まれた午後7時半。葛城川沿いの公園に集合した旧御所町他5地区のススキ提灯は、抽選で決められた順に本社へ向けて出発。担ぎ上げる地区、台車に乗せて運ぶ地区などそれぞれだ。三々五々に発せられる鉦と太鼓の音は列が進むに従い、不思議と重なりあって独特のリズムを生み、聞く者をわくわくさせる。
行程の半ば、土手沿いを歩く頃には辺りはすっかり暗くなり、無数の炎のゆらめきが際立って一層幻想的だ。頭上には三日月、川向こうの背後には花火が上がり、行く手には葛城山が闇に浮かぶ。この伝統行事はススキ提灯献灯行事としては県内最大級の規模を誇り、奈良県無形民俗文化財にも指定されている。
有力豪族・賀茂氏発祥の地とされる葛城山麓には、鴨都波神社の他に“上鴨”こと高鴨神社、“中鴨”こと御歳(みとし)神社が鎮座する。共に由緒深い祭を今に伝え、とても興味深い。謎多き初期の王権に思いを馳せながら、当地をゆっくり尋ね歩くのも一興だ。
(写真「闇に浮かび上がるススキ提灯」)
神社ライター 宮家美樹