14場所ぶりに西前頭15枚目に四股名が載った番付発表の朝、蒼国来は、「また新たな喜びが湧いてきた。早く土俵にあがりたい」と声を弾ませた。しかし、裁判終了から約3カ月。完全復活に向けて連日、懸命に稽古を積んできたが、「1日稽古を休めば、元の状態に戻るのに3日かかる」といわれる世界だけに、そんなに簡単にはいかない。
稽古を始めて1カ月たった先場所前の稽古総見では、これが大相撲界流の復帰祝いとばかりに白鵬が胸を出し、稽古をつけた。しかし、わずか3番ほどで息が切れて足が出ず「横綱には失礼だったけど、ぶつかれなかった」と、その場にうずくまってしまった。
「そのときに比べるとスタミナがかなりついてきたのは確かで、番付発表の2日後から時津風部屋に出稽古を開始し、いきなり14番取った。ただ、相撲巧者の豊ノ島に4戦全敗するなど、肝心な相撲勘はまだ以前の域まで戻っておらず、師匠の荒汐親方(元小結大豊)も『ただ土俵に立つだけでは意味がない。注目の場所だけに、何としても勝ち越してもらいたいけど、現実は厳しいだろう』と険しい顔でしたよ」(相撲記者)
“平成の大横綱”といわれた貴乃花でさえ、右膝負傷で7場所連続全休したあとの復帰場所では12勝するのがやっと。その後、1度も優勝できないまま、3場所後に引退を決断している。想像以上に復活の壁は分厚いのだ。
こんな現実から目を背けるように、出身地の中国・内モンゴルと関係のある岐阜県の会社から新しい化粧まわしをプレゼントされるなど、周囲はお祝いムードに包まれている。
果たして蒼国来は、これらの期待に応えることができるか。