樫の舞台で可憐(かれん)に咲いた「ひなげしの花」は、さらにたくましく成長した。牝馬2冠に向けて、トールポピーが女王の風格を漂わせている。
「栗東に戻ってからもテンションが上がらず、いい雰囲気を保っていますね。おとなしいし、カイバもよく食べていますから」と前川助手はうなずいた。
オークスで見事に1冠を達成した後は放牧で英気を養った。その後は函館競馬場に入厩。涼しい環境で徐々にピッチを上げていった。帰栗したのは4日。長い輸送にもダメージは皆無だったという。「体重が490kg。長距離輸送の後も大きく減っていないのがいい」。春にあったひ弱さはもうなくなった。
以前はカイ食いが安定せず、馬体重の調整が難しかった。そのため攻め馬もしっかり積めず、それが桜花賞の8着惨敗につながってしまった。その時の馬体重が460kg。オークスでも462kgだっただけに、今のボリュームある体は、今後のとてつもない可能性を示唆している。
10日には1週前追い切りが行われ、DWコースで6F84秒5、ラスト1Fは12秒3。併せたビーチパトロール(3歳1000万)に馬なりのまま楽々と併入した。
「まだスイッチを入れないように調教師からいわれているので、1週前は馬なりで。具合はいいし、折り合いにも不安はなさそうなハミの取り方だった。最終追いでジョッキーが乗ればきっちり仕上がると思う」
前哨戦だけに100%とはいかないが、力を出せる仕上がりには持っていけそうだ。
「心身ともにまだ幼い。その分、成長の余地が残っているので、この秋が楽しみですね」
シーザリオ、ウオッカなど厩舎の先輩牝馬に負けない走りを、いきなり見せてくれそうだ。