初回で死因究明に威力を発揮したAi(死亡時画像診断Autopsy Imaging)であったが、今回は事件を見落とし、「弱点だらけのAi」とバッシング報道されてしまう。そこにはAI導入に不満な警察の暗躍があるが、この事件は決してAiセンターの失点ではない。遺族に承諾解剖を勧めたのはAiセンター側の人間である白鳥であった。解剖で外傷が発覚した後も、警察は積極的に捜査しなかった。事件解決は白鳥の閃きのお蔭であり、Aiセンターの手柄である。
もともと白鳥の問題意識は死因不明社会にある。不審な死体であっても警察が事件性なしと判断すれば、調査されずに真相が闇に葬られてしまう。今回の事件も警察任せでは、病死か事故死で処理されていた。それを覆した点は白鳥の勝利である。
Aiは真相解明の手段である。初回ではAiと法医学(解剖)の対立という構図を描いたが、本来は対立するものではない。法医学者の笹井スミレ(小西真奈美)は「解剖でなければ死因は究明できない」と主張するが、コストや遺族感情などの問題で解剖の徹底が難しいという現実が出発点である。容易に解剖できないからAiが必要になる。むしろ初回のようにAiの結果に基づいて解剖が行われれば、Aiは解剖率の向上にも寄与できる。
Aiと解剖は相補的なものであり、Ai推進側を善玉としつつも、Aiの限界も描く点が『アリアドネの弾丸』の奥深さである。Aiの結果を絶対視して異論を受け付けないならば、真相が葬られてしまう点で警察の予断と変わらなくなる。警察サイドから「実はAiを信用していないのでは」と皮肉を言われる白鳥は真相究明を第一とする硬骨漢である。
小説原作のドラマでは成功した部類に入る『バチスタ』シリーズであるが、主役級の白鳥のキャスティングは原作のイメージを破壊する。原作では小太りで、ゴキブリに形容される白鳥を硬派な仲村トオルが演じている。中村の演じる白鳥にも原作のような軽さはあるが、スーツの似合うカッコよさは原作にはない。この外見的なギャップをドラマ『アリアドネの弾丸』では死因不明を許さない熱い男となることで説得力を持たせた。
原作シリーズでは田口公平が行き詰った時に事件解決者として登場するパターンが王道の白鳥であるが、ドラマではAi推進の熱情によって自らも渦中に入り、火傷しそうである。それ故にこそ冷静な門外漢である田口(伊藤淳史)がAiセンター長になる意味がある。原作とは一味違う田口・白鳥の凹凸コンビに期待したい。
(林田力)