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初公開 昭和の大スター知られざる下積み秘話(3)

 当時の俳優は必ずどこかの映画会社と専属契約しており、5社協定によって他社の俳優同士が共演することはほとんどなかった。そんな時代、渡部さんたちのような記者が、スターたちの交流を取り持つことも少なくなかった。
 「雑誌での顔合わせをセッティングしてあげると喜ばれましたね。そういえばある年、『上半期の新人にスポットを当てる』という企画で座談会を開いたんですが、そのメンバーが日活の石原裕次郎、東映の高倉健、大映の川口浩、東宝の白川由美、松竹の杉田弘子と渡辺文雄。今考えると、凄い顔ぶれでしょ」

 こうした取材でも、それぞれの性格がよく表れていたそうだ。
 「裕ちゃんや浩ちゃんは、飲んで食べて言いたい放題なのに、健さんはほとんどしゃべってくれなかった。翌日に追加取材をしに行ったら、2人っきりで取材に応じてくれて。しかも、座談会に出席していた杉田弘子とデビュー前に付き合っていたなんて話まで明かしてくれました。この恋は先にスカウトされた杉田から『今度会っても気安く声をかけないで』と言われて終わったそうですけど」

 当時、デビューしたばかりの高倉のギャラは一本2万円程度。よく先輩たちの車を洗いながら「早く自分の車が欲しい」とボヤいていたという。
 「映画で共演した東映専属の若い女優さんが健さんにほれちゃって、その相談を受けたことも。それで私が健さんのところに『よかったら付き合ってあげて』って頼みにいったんですが、『どうしても妹としか思えない』って断られました。江利チエミさんと結婚するときも、『まだ結婚は早いんじゃないの。もう1、2年先に延ばせないの』なんて忠告したことがありました。人気が出始めていた頃で、結婚の影響を心配したんですけど、今考えれば本当におせっかいもいいところでしたね(笑)」

 スター同士のロマンスをカムフラージュするために協力したことは一度や二度ではなかった。
 「浅丘ルリ子ちゃんと小林旭の交際が噂になっていた頃は、よくロードショー劇場に一緒に行ってました。先に旭が指定席に座っていて、そこに合流するんですけど、私がいるから『仕事なのかな』ってほかの記者たちの目をごまかせたから(笑)。逆に対談をしてもらったウェスタン歌手の小坂一也が、ルリちゃんのストーカーみたいになっちゃって、私が注意を申し入れたなんてこともありました」

 そんな渡部さんの目に現在の日本映画界はどう映っているのか。
 「ここ数年、邦画界は盛り上がっていますけど、一つ言えるのは当たってる映画と、いい映画は違うんだということ。私的にはいい作品が是非当たってほしいですね。こんなこと言うと、また映画会社の人に嫌な顔されちゃうかな(笑)」

渡部保子(わたべやすこ) 日大芸術学部映画学科から映画世界社に入社。『映画ファン』が休刊するまで編集部に在籍し、その後も映画評論家として映画界に深くかかわってきた。現在は日本映画批評家大賞選考委員代表も務める。この春には著書『昭和のスター 最後の証言』(収穫社)を出版した。

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