7月12日、東北楽天ゴールデンイーグルスはNPB(日本野球機構)事務局に電話を入れた。星野監督のオールスターゲームの辞退を正式に伝えるためだ。楽天側は神妙な口ぶりで「申し訳ございません。これ以上引っ張るのは、失礼ということで…」と謝罪の弁を並べたが、NPB上層部の怒りは増すばかり。「どうしてこの時期に!?」との疑念がパ5球団の本音である。
「連絡が入ったのが土曜日ですよ。球宴本番まで1週間を切っており、再び早急にパ・リーグの指揮官の代役を決め直さなければなりません。月曜日に試合が入っているチームもあれば、移動中のチームもある。とにかく、14日の月曜日中に決めないと…。今回のドタバタは楽天球団と星野監督の対立に発展するかもしれません」(球界関係者)
全パの監督は、楽天の監督代行だった佐藤義則投手コーチが務めることで一度は落ち着いた。しかしその後、監督代行が大久保博元二軍監督に交代。チーム指揮権を預かってまだ日が浅いため、さすがに大久保代行に球宴の指揮までは任せられない。このとき、すでに“楽天への不信感”は寄せられていた。
「星野監督の臨時指揮が提案され、楽天も合意していました。無理ならば、この時点で言ってほしかった」(同・関係者)
星野監督は胸椎黄色靱帯骨化症などと診断され、手術を受けたばかりの身体。この関係者によれば、回復具合は「全て楽天を介して知らされている」という。
球宴での臨時指揮が難しいのであれば、この時点で伝えればいいだけのこと。楽天が不信感を買った理由はその時点で断らず、パ・リーグ理事会、NPBの通告を自軍に持ち帰り、後になってから「できません」と伝えてきたことにあるようだ。
パ指揮権を巡る喧騒をあらためて振り返ると、意外な抗争図式が見えてくる。
楽天首脳陣が佐藤コーチから指揮権を剥奪すると決めたのは、7月1日のオリックス戦後。4点差をひっくり返された試合内容に愕然とさせられ、立花陽三球団社長、安部井寛統括本部長らが深夜に“トップ会談”を行い、大久保体制を決断した。大久保代行は二軍戦の行われていた宮城県仙台市にいた。2日早朝、大久保代行の元に電話が入り、神戸の一軍に合流して今日に至るわけだが、今思えば彼らの行動には“周到”さを垣間見ることができる。