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群雄割拠の高級食パン「戦国時代」

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提供:週刊実話

 食事の際の主食において、日本では米を食べる人が多かった。しかし、近年はパンを主食にする人のほうが上回っているようだ。それは総務省統計局が2018年2月に公表した家計調査(2017年)の結果を見ても明白で、一世帯の平均支出金額は米よりもパンのほうが多い。特に朝食は、パンを主食にする人が増加傾向にある。

 手軽さや種類の豊富な点がパン人気の理由みたいだが、ここ数年で特に注目を集めているのが“高級食パン”だ。

「健康志向は相変わらず強いですが、美味しいパンを少しだけ食べれば健康にも大きな影響はありません。満足感も得られるため、好む人が多くなってきたのです」(フードアナリスト)

 そもそも、高級食パンの人気に火をつけたのは、コンビニがきっかけだった。

「それまで食パンといえば、100円前後が主流でした。それを2013年にセブン−イレブンが6枚入りで250円の食パン『金の食パン』を販売。カナダ産の小麦粉、工程に『手でこねる』ひと手間を入れ売り出したところ、『美味しい』と評判が高まり、半年で2000万食の大ヒットとなったのです」(同)

 こうした動きを敏感に感じたのは関西が早かった。2013年に大阪で高級食パン専門店『乃が美』の1号店がオープンしている。

「長年飲食業に携わってきたオーナーが試行錯誤の末、完成したのが高級“生”食パン。オリジナルブレンドの小麦粉を使い、ハチミツを隠し味として練り込む。使用するマーガリンは、乳化剤、着色料、保存料、香料がすべて無添加の、トランス脂肪酸を低減したオリジナル製。これをバターと併用することで独特の“甘み”が加わり、食パンだけで美味しく食べられるほどです」(業界関係者)

 乃が美は1斤432円(税込み)、2斤864円(税込み)の高級食パンとジャムだけを販売するが、またたくまに話題となり、数年で全国に110店舗まで展開するほど拡大。現在は業界最大手となっている。

 同時期に1号店を大阪市都島区にオープンした高級食パン専門店『一本堂』も負けていない。商品は国産の小麦粉だけを使ったプレーンな「日本食パン」に加え、濃厚な生クリーム等を配合した「生クリーム食パン」、レーズンやチーズの入った「趣向食パン」など、多種多様な食パンを提供。現在の店舗数は全国に105店あり、1日400斤を売るという繁盛店もあるほどだ。

 首都圏では一本堂が先行し、乃が美は東京に出店していなかったが、今年11月15日に麻布十番店を出店した。ガラ空きだった東京の高級食パン市場に、大阪勢が殴り込みをかけてきているのだ。

 大阪勢を迎え撃つ首都圏の勢力もある。まず、俺の株式会社が展開する『俺のベーカリー&カフェ』だ。

「俺のベーカリー&カフェは、坂本孝社長が恵比寿のガーデンプレイスを起点に首都圏で8店舗を展開しています。恵比寿だけでも1本(2斤)1000円の高級食パンが1日で1000本もさばける。現在、多店舗体制に入りつつあります」(同)

 さらにネーミングで消費者の度肝を抜いた東京都清瀬市の食パン専門店『考えた人すごいわ』や神奈川の高級食パン専門店『午後の食パンこれ半端ないって!』などもある。

「『考えた人すごいわ』は小麦粉、国産バター、塩や生クリーム、練乳、蜂蜜などの原料にこだわる。さらにオーストラリア産のマスカットレーズンを使った食パン『宝石箱』が人気です。『午後の食パンこれ半端ないって!』の食パンは手でちぎり、そのまま食べたときにとにかく“半端ない!”と感じる味を目指してのネーミングだという」(同)

 銀座で話題を集めて孤軍奮闘している店が『セントルザベーカリー』だ。同店はバケットでは国内屈指の有名店『ヴィロン』の姉妹店のため、オープン当初から注目度は高く、今でも2〜3時間行列に並ばなければパンは購入できない。今年11月に2号店を青山に出店し、勢力を伸ばす。

 また、高級食パン市場には、新興勢力も急増中だ。2016年創業の『高匠』は大阪を中心に6店舗展開し、東京進出も狙っている。完全無添加パンを兵庫県芦屋に展開した『PANYA芦屋』も東京にたて続けに出店し話題だ。

 さらにコンビニやスーパーなどで販売される既製品の食パンも品質が上がり、品ぞろえも増えている。

 競合が入り乱れ”高級食パン戦争”が過熱︱︱。今後の見通しを、冒頭のフードアナリストが語る。

「限られた商品販売のため初期投資が抑えられる。さらに商品数も少ないため材料や在庫の管理が簡単。そのため、今後も続々と腕に自信のある個人店の新規参入が大いに予測されます」

 火蓋が切られたばかりの高級食パン戦争は、当分続きそうだ。

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