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EV電気自動車規格争い 欧米包囲網の影でほくそ笑む 「ハイブリッド車」に命運を懸ける トヨタの“商魂”(2)

 問題はトヨタの対応だ。チャデモ陣営にくみする同社は、12月に4人乗りの小型車『iQ』をベースにしたEV『eQ』を発売する。EVで出遅れたトヨタにとっては大英断だが、関係者を絶句させたのは販売を「日米100台」にとどめたことだ。2年前にEV投入をブチ上げた際には「数千台」と発表、口さがない向きから「EVもやっているとのアリバイ工作。本音ではやりたくないのだろう」と陰口をたたかれたが、実際にはその数さえも遠く及ばない。これでは「なぜだ」と憶測を呼ぶのも無理はない。
 「ハイブリット(HV)が好調なトヨタは、HVを次世代エコカーの本命と捉え、EVこそ本命と唱える日産とは対照的な立場です。ましてHVの開発に巨額の資金を投じたトヨタのこと、投資マネーをタップリ回収して十分オツリがくるまでは、HV全盛時代であって欲しいと願って当たり前です。その点では、日産や三菱自動車のEVシフトを快く思わない欧米勢と共通します。トヨタは日本メーカーの仁義としてチャデモ陣営に入っているとはいっても、本音ではチャデモの普及など望んでいませんよ」(トヨタ・ウオッチャー)

 実は日産とトヨタにはイワク因縁がある。政府による今回のエコカー補助金は盛り上がりを欠き、9月で打ち止めとなった。ところが前回('09年4月〜'10年9月)は、金額が大きいこともあって好評のうちに慌ただしく終了した。
 「当然ながら期間延長を求める声が高まったのですが、業界団体の日本自動車工業会は消極的だった。むろん、政府の血税負担に配慮したわけじゃありません。補助金の恩恵を一番受けたのはトヨタのHV車プリウスだったことから、一部で“プリウス減税”と揶揄されたものです。当時の会長は日産の志賀さんとあって『これ以上延期してもトヨタが潤うだけ。だから自工会は動かなかった』と舞台裏を詮索する声しきりでした」(トヨタOB)

 因果はめぐるというべきか、志賀氏の後任として今年の5月に自工会の会長に就任したのは、トヨタの豊田章男社長である。まるでそのタイミングを狙ったかのように、GMなどが独自規格《コンボ》を打ち出し、先行する日産や三菱自動車を牽制した。次いで冒頭で述べたSAEインターナショナルの駄目押しである。トヨタ・ウオッチャーが苦笑する。
 「トヨタは苦戦する国内勢を尻目に、来年3月期の営業利益を1兆500億円に上方修正した。最大の稼ぎ頭は'09年から'10年にかけて大規模リコールでガタガタになった北米市場です。裏を返せば章男社長が“社長失格”の烙印を押されずに済んでいるのは、誰が何と言おうと最大市場の北米がトヨタの命綱ということ。それを実感させられた以上、コンボ陣営に真っ向から弓を引けるわけがありません。形式的にはチャデモ陣営に名を連ねているといっても、コンボの隠れ応援団がトヨタの実態というわけです」

 御曹司社長の本音は、どうやら「欧米を敵に回すEVは御免被る」のようだ。

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