東芝、日立製作所、ソニーの3社と官民ファンドの産業革新機構がスクラムを組み、来年4月にスマートフォンなどに使われる中小型液晶パネルの新会社『ジャパンディスプレイ』を設立することが11月15日、正式に決まった。
この計画は今年の初めに急浮上、8月末に3社の液晶事業を統合することで大筋合意していたが、業界には「3社のお荷物事業を血税で救済するシロモノ。産業革新機構=経済産業省は何を血迷っているのか」と、いぶかる声しきりだった。しかし政府は耳を貸さず、正面突破を図った。だからこそ、冒頭の業界関係者は「世間の耳目を集めた事業仕分け、政策仕分けが、しょせんはパフォーマンスに過ぎないことがハッキリした」と斬って捨てる。
そもそも東芝、日立、ソニーの3社にとって液晶事業は、本業の足を引っ張るだけの厄介者と化しているのが実情だ。
東芝の液晶子会社である東芝モバイルディスプレイは、直近で1033億円の債務超過に陥っている。これでは新規投資など土台ムリで、来年4月稼動を目標に石川県で液晶新工場を建設しているが、1000億円に上る投資マネーは米アップル社から調達する予定だった。
「東芝は“日の丸連合”への参加を事前にアップルへ説明しておらず、慌てて説明に行ったものの、東芝の液晶事業を事実上の子会社にしようとしていたアップルは『話が違う』と態度を硬化させた。苦肉の策として新たに発足するジャパンディスプレイがこの新工場を継承する計画が浮上したのですが、この話は立ち消えになった」(情報筋)
代わって新会社は、パナソニックの茂原工場(千葉県茂原市)を取得することになった。その舞台裏は後述するとして、要するに東芝は液晶ビジネスの不振に困り果ててアップルに擦り寄った揚げ句、よりによって政府主導の“日の丸連合”との二股作戦に打って出た図式なのだ。
日立も液晶ビジネスに苦慮してきた。子会社の日立ディスプレイは220億円超の債務超過に喘いでおり、ここ数年は「選択と集中」の名の下、外部への売却観測がくすぶっていた。ソニーまた然り。既に一部ラインを京セラに売却し、早々に“足抜け”を目指してきた。
まさに3社揃って、政府肝いりによるジャパンディスプレイの旗揚げは「渡りに船」ということである。
それにしても政府はなぜ、一度死んだような事業をゾンビのように再生させようとするのか−−。