だが、日大にだって良識派はいる。彼らはアメフト部の父母会と水面下で交渉を進めているという。
「父母会は毎回2、3人の代表者を出し、良識派と練習再開の時期やそのサポート方法を協議し、一部で合意しました」(関係者)
近く、アメフト部の練習は再開される。ただし応援することでは合意したが、信頼関係は回復していない。日大は第三者委員会の調査待ちとし、反則指示をまだ認めていないのだ。それには学校内の派閥抗争も影響していた。
「一般的に、大学トップは1人ですが、日大は学部は学長、経営は理事長のツートップ体制。しかも、大塚吉兵衛学長は一般理事で、経営面では常務理事だった内田氏の下」(同)
スポーツ畑出身者が大学経営トップに躍り出た組織は珍しい。また、相撲部監督だった田中理事長の脇をアメフト部の内田氏が支えているのも、おかしな構図だ。
「'68〜'69年の日大紛争がまだ背景にあるようです。学生運動と経営陣が衝突し、後者を助けたのが運動部でした。理論家と体育会とで肌が合わなかったんでしょうが、以後、体育会出身者が学校職員として残り、出世していきました。田中氏は12代目理事長、体育会出身では3人目。昨年9月に4期目に入りました。相撲部時代は学生横綱で日大卒業後は職員となって、アマタイトルを総ナメにし、1学年後輩の輪島がプロになった後も勝てないほどの猛者でした。内田氏は『寄付金を集める天才』。そこで“田中-内田ライン”が構築されました」(日大OB)
運動部出身の理事長誕生となり、これを面白くないと見る学術畑出身の役員もいたが、年間約2600億円の予算は、田中理事長によって動かされている。内田氏は人事部長も兼ねていたため、学術系は何も言えなくなっていた。
「メディアの前で醜態を晒した広報部にしても、的確な指示などを下せる人材がいません。内田氏は『試合中のケガ』みたいな軽い言い方で報告していたし、それを鵜呑みにしてしまいました」(前出・関係者)
また、日大はタックル事件に別の感情も抱いていた。テレビ各局が流した問題シーンの映像の出どころだ。「関学大がメディア提供した」として、それに憤怒していたのだ。お門違いもはなはだしいが、ようやく事の重大さを知った大塚学長は、情報不足のまま、謝罪会見を開いた。結果は言うに及ばず、だ。
「懸念すべきは、反則指示があったとする関東学生アメフト連盟裁定と、日大が設置した第三者委員会の見解が違ったらどうするのか。今さら外部調査をするよりも、非を認めて被害者に謝罪すべき。でないと、次に進めない」(同)
田中理事長は「喋りすぎると墓穴を掘る」が持論のようだが、窮地だからこそ矢面に立つべきだ。体育会、学術畑、組合でマンモス大学は分裂しつつある。