6月18日の大阪北部地震が起きた場所は、「近畿三角地帯」と呼ばれる、専門家の間でも危険視されていた活断層密集地帯だった。
「福井県の敦賀湾を頂点にして、淡路島から三重県の伊勢湾を底辺とした地域です。活断層が集中し、過去には江戸時代前期に起きた寛文近江・若狭地震(1662年=推定M7.6)、現在の三重県や奈良県で被害が出た伊賀上野地震(1854年=推定M7)などが起きているのです」(サイエンスライター)
また、今回の地震はM7以上の地震が想定されていた3つの活断層に近い地域で起きたと推定されている。その3つとは、兵庫県神戸市北区から大阪府高槻市まで東西方向に走る「有馬-高槻断層帯」、大阪府枚方市から羽曳野市まで南北方向に走る「生駒断層帯」、大阪府豊中市から岸和田市まで南北方向に走る「上町断層帯」だ。
「このうちの『有馬-高槻断層帯』では1596年、京都府を震源としたM7超の慶長伏見地震が起き、1000人以上の死者が出たとされている。その上、『近畿三角地帯』と、これら3つの断層帯は、九州から関東地方を貫く『中央構造線』と呼ばれる大断層の動きの影響をモロに受けるとの見方もあるのです」(同)
地震学が専門で武蔵野学院大学特任教授の島村英紀氏は、こう言う。
「日本最大の断層である中央構造線は、長野県以東ははっきりしない部分もあり、幅もあるんです。中央構造線沿いで起きた3連弾の巨大地震の1つである慶長伏見地震の震源、有馬-高槻断層も、その中央構造線からは離れている。ただし、今回の地震の震源はまだ完全には特定されていないものの、今後は一昨年の熊本地震以降活性化している中央構造線沿いで、大きな地震が発生する可能性は十分あると思います」
島村氏の言う3連弾とは、慶長伏見地震、さらにその前日に起きた大分県を震源とする慶長豊後地震(M7.0〜7.8)、その3日前に愛媛県を震源として発生した慶長伊代地震(M7.0)で、専門家の間では、これらがすべて中央構造線を介した連動型の地震の可能性が指摘されているのだ。
この中央構造線の活性化は、フィリピン海プレートからかかるプレッシャーが深く関係していると言われる。
これまで多くの火山噴火、巨大地震を予知し、的中させてきた琉球大学理学部名誉教授の木村政昭氏は、こうした見方を示す。
「中央構造線付近で起きた熊本地震も、フィリピン海プレートのプレッシャーに活断層が悲鳴を上げたからに他なりません。そして、その力の大本は、太平洋プレートなのです。大阪北部地震についても、震源は活断層ではありますが、動いたのは太平洋プレートが影響している。そうした中、私は最も危ないのが伊豆・小笠原諸島付近の(大きな地震が起きていない)空白地帯と見ています。ここで地震が発生した場合は、日本列島から距離があるため、地震動よりも太平洋側の津波が心配ですね」
では、いつ起きてもおかしくないとされている南海トラフ巨大地震はどうか。南海トラフで地震が起きるまでのサイクルの後半では、内陸での地震活動が活発になる傾向がある。
実際、最も新しいところで1944年の昭和東南海地震(M7.9)の前年には、鳥取地震(M7.2)や長野県北部地震(M5.9)などが起きている。
「そうした南海トラフ巨大地震の前に起こる内陸地震の1つとして、'95年の阪神・淡路大震災(M7.3)を挙げる地震学者もいるのです。さらに今、この地震の再来も懸念されている。注目されているのは、岡山県の東部から兵庫県南東部にかけて分布する山崎断層で、阪神・淡路大震災の原因になったとされる野島断層と共鳴し合っているとも言われています。これらも中央構造線が近いことから、南海トラフ巨大地震の前段として、大きな地震が起きる可能性があると言えるのです」(前出・サイエンスライター)
山崎断層では、868年に活動してから1000年以上も大きな地震が起きていない。さらに、昨今のトレンチ調査(活断層の過去の活動を見る掘削調査)で、その活動間隔がおよそ千数百年〜二千数百年であることが判明しており、兵庫県では死者4000人、負傷者3万人、建物全半壊20万棟と、大地震が起きた際の被害を想定しているほどだ。
内陸部での地震と言えば、長野県北部で5月12日に震度5弱(M5.2)、25日に震度5強(同)が立て続けに起きている。後者の地震で震度5強を記録した長野県栄村は、2011年の東日本大震災の翌日に震度6強の地震が発生したことでも知られる(長野県北部地震)。
「5月の地震の震源と7年前の震源はかなり近い場所で、深さも酷似している。そのため専門家の間でも、何らかの前兆現象ではないかとする見方もあるのです」(同)
前出の島村氏は、こう続ける。
「5月の栄村の地震は、日本で2番目に大きい断層『糸魚川-静岡線断層帯』と、中央構造線が交差する地域で発生したもの。前に述べたように、中央構造線は長野より東側にどう走っているかはまだはっきり分かっていないものの、いずれにせよ周辺の活断層を含め活発になっている証拠。それを考えれば、首都圏でも大きな地震が起こる可能性もあるのです」
中央構造線は関東地方北部を東西に走っているとされ、そこを末端とした多くの活断層が東京直下にまで走っている。
「例えば、東京メトロ南北線の工事を行っている際、四ツ谷-駒込間で活断層らしきものが出たといいます。断言はできませんが、中央構造線は長野、群馬を通って太平洋側へ抜けている可能性がある。中央構造線が活性化しているので、いずれかで直下型地震が起こり、それが首都直下地震に結びつく可能性がないとは言えません」(島村氏)
加えて、地震調査委員会の評価によって、中央構造線で地震発生確率が最も高い「Sランク」とされているのが、愛媛県にある「石鎚山脈北縁西部」の断層帯。今後30年以内の発生確率は3%以上で、全体が動いた場合の地震規模は最大でM7.5。地域を分けると、“M8.0からそれ以上”という部分もある。
次はどこで起きるのか。