NECウオッチャーの一人は、同社トップが権力抗争に明け暮れた“お家騒動”の後遺症を指摘した。とりわけ世間の耳目を集めた関本忠弘元会長と西垣浩司元社長(ともに故人)の壮絶バトル。これに端を発していると語る。
「関本さんは先輩の小林宏治元会長とも激しくやり合ったように、NECの歴代トップでは異色の存在でした。その関本さんとガチンコしたのが、後に自殺した西垣さん。ご両人のバトルには街宣車が出動し、NECの本社ばかりか関本さんの自宅周辺が騒々しくなった。'98年に発覚した防衛庁(当時)水増し請求事件で関本さんは会長を退きましたが、西垣さんたちとの睨み合いは以前にも増して陰湿になったばかりか、つい最近まで通信系とコンピューター系が壮絶な権力抗争を展開したことから、2年前に中立派の遠藤社長が就任するまでは、事業の方向性が定まらない状態が続いてきたのです」
すなわち、30年以上も前から連綿と続いた“お家騒動”体質が、重いツケとなって屋台骨を揺るがしているのである。これでは舵取り役を託された遠藤社長が独自カラーの発揮ウンヌン以前に、背負い込んだ「負の遺産」に悲鳴を上げるのも無理はない。
といってリストラに名を借りた恥も外聞もない人減らしや給料カットでは、ジリ貧地獄からの脱却など望むべくもない。ウオッチャーが続ける。
「このままでは野垂れ死にする。だから銀行団は必死になって再生策を模索しているのですが、最大のネックはNECが三菱重工などと並んで防衛産業の一翼を担っていること。軍事機密に深く関与している以上、自動車メーカーのように海外企業と資本・業務提携できません。下手に提携すれば最先端のミサイル技術などが回りまわって仮想敵国に筒抜けになってしまう。それがわかっているからこそ、NECは日産=ルノーのように、海外企業を駆け込み寺にできないのです」
小惑星探査機『はやぶさ』に搭載されたNECの航空宇宙技術また然り。宇宙航空研究開発機構(JAXA)は2014年に打ち上げる『はやぶさ2』についてもNECの技術を活用する方針。国家の威信を懸けたプロジェクトが、外資に身売りした後のNECとのタッグマッチでは、JAXAのメンツは丸つぶれだ。
当然、そんな事情はNECとて先刻承知している。だからこそ外資の幻影におびえることなく人減らしに邁進し、給料カットの荒業を駆使したのだろう。それどころか「トップが権力抗争にウツツを抜かしてきたのも、国防を担っているから国策としてつぶせないとの慢心があった」(OB)という。
NECが負った“罪と罰”は相当に重いようだ。