「当初、あの巨大津波は三陸沖の海底にある陸側のプレートと海側のプレートの境目がずれて発生したと考えられてきました。しかし、それで算出した場合、津波の高さは5メートルとなり、実際に確認された20メートルを大きく下回ってしまう。そのため、三陸沖にある2000〜3000メートル級の“崖”からなる海底活断層の影響が高まったのです」(サイエンス誌記者)
この研究結果について、琉球大理学部名誉教授の木村政昭氏が解説する。
「たとえば数千メートル級の崖が続く凹凸のある海底が、地震動で10メートル沈んだとすると、海面も10メートル沈む。しかし、海面はリバウンドして元に戻り、その時の盛り上がりが津波となって沿岸を襲うわけです。つまり東日本大震災では、30メートルほど海底が沈んだことになります」
となれば、不気味なのは他地域の海底活断層の存在だ。実は房総半島南端から南東に百数十キロ離れた太平洋の海底にも、2つの活断層が存在するという。
「南北に走る2断層はほぼ並行して走っており、東側の活断層は長さ300キロ以上、西側は少なくとも160キロ。崖の高さはそれぞれ約2000メートルと3000メートル超で、つまりはアルプスの山並みと同じ規模。もし2つの海底活断層が活動を再開すれば、M9級の巨大地震とともに巨大津波を発生させる。房総半島の沿岸部はまさに壊滅的な被害を受けるでしょう」(前出・サイエンス誌記者)
巨大津波で危惧されるのは、やはり原発だろう。10月1日にJパワー(電源開発)が建設工事の再開を発表した大間原発(青森県)付近の海底には、10万年前以降に繰り返し動いた活断層の存在が指摘されているのだ。
今村教授は早急な海底活断層の研究を訴えている。秒読みとされる「南海トラフ巨大地震」に加え、目前に迫る危機に対応しきれるのか。