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森永卓郎の「経済“千夜一夜"物語」 ★令和時代の経済社会展望

 令和時代に経済や社会がどのように変化するのか。ほとんどの論者が主張するのは、人工知能が発達して多くの仕事が人工知能に代替されることと、生産年齢人口(15〜64歳)が大きく減少するという2点だ。

 私もその通りだと思うが、違和感を覚えるのは、そこから導かれる結論だ。人工知能に仕事が代替されると言いながら、生産年齢人口の減少に対処するために、女性や高齢者がより多く働くようになるとともに、外国人労働者の受け入れ拡大が不可欠になるという見方が圧倒的なのだ。

 しかし、国立社会保障人口問題研究所によると、今年と比べて2045年の生産年齢人口は25%の減少にとどまるそうだ。

 一方、同じ2045年には、人工知能が人間の脳を超える「シンギュラリティ」が到来するとみられている。そのとき、人の仕事はどうなるのか。2015年に野村総合研究所が発表した調査によると、技術的に日本の労働人口の49%が人工知能やロボット等で代替可能になるという。つまり、生産年齢人口が減る2倍のスピードで、人工知能が生産性を上げていくことになり、大幅な人余りが生ずると見込まれるのだ。

 その人余りを解消する方法は2つある。休日を増やすやり方と、引退年齢を早める方法だ。私は後者の可能性が高いとみている。その最大の理由は、新しい時代に生き残る職業の特性にある。

 人工知能に置き換えるのは、定型的な仕事。逆に言うと、今後も生き残っていく仕事は、非定型的な仕事、つまりクリエイティブな仕事だ。具体例で言うと、画家や音楽家などのアーティスト系の仕事や、スポーツ選手、役者、作家、ゲームのクリエイターなどである。

 こうした職業でも、高齢期まで働き続けている人はもちろんいるが、圧倒的多数は若年層のうちに淘汰される。イメージでいえば、30代までに芽が出なければ、その後のブレイクはほとんど期待できない。

 だから私は、令和時代は、30代からせいぜい40代までチャレンジをして、その後は別の道を追求する人が増えると思う。別の道の王道とは、地方に移住して行う農林水産業だ。

 平成の時代に起きた社会現象は、大都市一極集中だった。貧困化と労働力不足のなかで、女性も高齢者もどんどん働くようになった。専業主婦のいない家族構成だと、郊外に住むのは難しい。そこで、家賃の高い都市中心部に住み、狭い部屋を広く使うため、断捨離をして、モノを持たない暮らしを選択したのだ。

 しかし、早期引退が可能になれば、環境がよく、住居費用もかからない地方暮らしのほうが望ましくなる。自動運転が当たり前になると、中山間地に住むことの不便さも解消される。

 そこで、早期引退をした中高年が、地方で農林水産業に勤しむ社会がやってくるのではないだろうか。

 農林水産業は、非定型的な仕事だ。人間がコントロールできない自然が相手の仕事だからだ。人工知能が農林水産業をすることはできない。いま国際農業資本がやろうとしているのは、自然を無視した食料製造ビジネスで、農業ではない。だから、私は大部分の中高年層が農林水産業に従事する時代がやってくると思う。それは、国民の幸福度も高めるはず。なぜなら農林水産業は、楽しいからだ。

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