待ち合わせ場所に指定された某市郊外にある団地近くの公園へ行くと、ベトナム人留学生の通称キバ(21)はベンチに座ってハンバーガーを食べていた。浅黒い肌に精悍な顔つき、鋭い眼光。その威圧感は相当なものだが、彼は流暢な日本語で話し始めた。
「メンバーは全部で30人ちょっと。全員ベトナム人で、俺と同じ留学生がほとんどだけど、3人は逃げてきた奴です。えっと、実習生っていうんですかね。職場から逃げてきたんですよ」
最近、国会でもその待遇を巡って問題となっている外国人技能実習生のことらしい。キバのグループは、どんな悪さをしているのか。
「主に窃盗です。バイク、高級自転車、車がメインですね。盗んだモノは、中年のベトナム人のボスが買い取ってくれるんです。これ以上は勘弁してください」
シノギ以外の時間は、メンバーたちと公園や河川敷に集まり、酒を飲んだり、バーベキューをしたり、ときには大麻などのクスリもやるという。いつしか古株の中国系チームから睨まれ、トラブルが増えていった。
「このへんは中国人だらけですから、自然と揉めることも多い。ベトナム人って、中国大嫌いなんですよ。だから俺たちも日本の不良とは仲良くしてるけど、中国人だけは許さない。この前もケンカになって、2人の中国人をナイフで刺しちゃいましたよ。そのうち死人が出るんじゃないですか」
どこか誇らしげにそう語ると、キバは「じゃあ、仕事があるんで」と言って笑顔で去って行った。
在留外国人の数が増えるにつれ、日本の裏側では外国人同士の勢力争い、抗争があちらこちらで起きている。今後、さらに外国人が増えれば、もっと本格的なマフィアが続々と日本にやってくるかもしれない。
かつて福建省出身者の不良グループに所属し、窃盗などの犯罪を繰り返していたという在日中国人のレストラン経営者は、今後の日本を次のように予想する。
「単純労働者に門戸を開くってことは、学歴のない、荒っぽい外国人がどっと押し寄せてくるということ。その中には、最初から犯罪が目的の偽装労働者もいるだろうね。’90年代の昔に戻ったみたいに、まずは荒っぽい、単純な犯罪が増えるはずだ。俺たちがそうだったようにね」
当時の中国人犯罪は、最近のネット犯罪などと違って、粗暴でエグい、ある意味分かりやすい犯罪のオンパレードだった。
国道上のATMをショベルカーで根こそぎ破壊してカネを奪ったり、同胞が経営する違法エステに忍び込んで従業員や客を縛り上げて金品を強奪したり、質店の商品を丸ごと奪う窃盗団など、まさにやりたい放題。福建、上海、北京など、出身地ごとに徒党を組んで、繁華街で血みどろの抗争を繰り広げる一群もいた。シノギを巡って暴力団とトラブルとなり、ヤクザを射殺した中国人まで現れたのだ。
「慣れない国で、工事現場でこき使われたりしたら、当然すごいストレスがたまるでしょ。必ず暴発する奴らが出てくる。落ち目と言われている日本経済だけど、他の国の貧しい奴らからしたら、まだまだとんでもなくリッチな国。彼らが日本人からカネを奪ってやろうと思うのは、ある意味、当たり前のことだよ」
前出の組対部関係者も、この意見に同調する。
「今後は、出身国別に徒党を組んだ不良外国人の中から、第2、第3のチャイニーズドラゴンが生まれてくるのは間違いない」
(明日に続く)