孫正義ソフトバンクグループ社長が記者会見で語ったところによると、同社は中国のパートナー会社からの要請で英領バージン諸島に合弁会社を設立、約6000万円を出資したものの事業不振から2011年に撤退した、という。その上で孫社長は「投資はあくまでもビジネス上の理由。(税金逃れの)租税回避のためではない」と強調した。
しかし、市場関係者の一部は額面通りには受け取っていない。その理由は昨年のグループ再編当時に、本社を英国に移転しようと計画していたためだ。
「移転を考えた大きな理由は、英国の法人税が日本よりも5割方安いことだったようです。国際的な投資環境もはるかにいいのですが、投資マネーの回収が先送りされそうなことから時期尚早と判断したらしい」(金融情報筋)
ソフトバンクは近年、インドビジネスにご熱心で、複数の新興ネット企業に出資している。孫社長が165億円の報酬を払ってヘッドハントし、次期社長が有力視されるニケシュ・アローラ副社長もインド出身だ。
高額報酬が話題になった直後、孫社長は「ニケシュはインドのIT企業投資で500億円超の利益を得ている。彼をM&Aの対象にしたと思えば十分におつりがくる」と豪語したが、関係者は「一部のIT企業にはソフトバンク側が巨額出資でサポートし、アローラ副社長の手柄にした疑いがある」と指摘する。インドは英国の元植民地。加えて今度は英領バージン諸島だ。移転先に考えた英国とのトライアングルが奇しくも形成される。
「金融取引でタックスヘイブンを使うのは、むしろ当たり前のこと。直ちに違法行為というわけではありませんが、名前をさらされたことにより国税当局の熱意が向けられることになるでしょう」(同)