この動きを加速させているのは、実は視聴者の目である。今やSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)などを用いて視聴者が直にCMを批判できる時代、炎上を恐れるあまり、アクの強いCMはほとんど制作されなくなり、その結果、どこかで見たような画一的なCMが溢れることになった。昨今、CMがつまらなくなった理由がここにある。
しかし、最近では逆に、視聴者を嫌な気分にさせる“不快CM”という新たなジャンルが登場した。制作する側の企業とすれば考えたくもないだろうが、誰も予期しなかった不快CMは困ったことにどんどん増加中なのである。
2015年上半期の嫌いなCMランキング1位に輝いたのは、マンツーマン指導で理想のボディーを手に入れるという触れ込みのトレーニングジム『ライザップ』だ。
「大量に流れているので、見るたびにイラッとします。CM前半の低音が響くとげんなり」(主婦・36歳)
「CMを見ていると、変わりすぎて逆に嘘くさい。ダイエットに成功すると、みんなチャラくなるんですかね(笑)」(会社員・32歳)
ライザップについては、返金をめぐるトラブルなどネガティブな報道もあったが、久しぶりの大口スポンサーとあってか、問題視するメディアはさほど多くない。だが、ことCMでいえば視聴者の反感を買っているのは事実のようだ。アンケートでは、香取慎吾を起用したバージョンに批判が集中した。
「昔から仕事を選ばない印象ですが、大胸筋をピクつかせるシーンに気分が悪くなりました」(OL・28歳)
次に批判が多かったのは、桃太郎、浦島太郎、金太郎を主人公にした『au』の三太郎CMだ。桃太郎をモチーフにしたCMはいくつかあるが、その契機となったのは、昨年3月に公開された『ペプシNEX』のCMシリーズ。まるで劇場大作のような出来栄えで、小栗旬の演じる桃太郎はさながらスーパーヒーローのようだ。
対して今年1月から始まったのがauのシリーズで、完全に後出し。桃太郎、浦島太郎、金太郎が“新しい英雄(au)”というコンセプトだが、ペプシとは異なり、等身大の桃太郎たちのユルい日常が描かれている。企業別CM好感度では1位に輝いているが、読者の意見はなかなか手厳しい。
「制作者側の“面白いでしょ?”って魂胆が見え見え。桃ちゃん、金ちゃんが『彼女いないの?』とか言い合ってるけど、まったく笑えない」(会社員・30歳)
「ペプシの桃太郎をパクッた劣化版といわれてもしょうがない内容。菜々緒の乙姫が風俗嬢にしか見えない」(自営業・44歳)