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【不朽の名作】第1回〜倍賞千恵子の演技が出色だった高倉健主演の「駅 STAION」

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 映画はどの時代においても、人々の心に感動や笑いを刻み込んでくれるものだ。名作とは何度見ても、何年も経ってから見ても、感動を与えてくれる。そこで、本項では主に1980年代、90年代に公開された不朽の名作のなかから、今でも心に残る映画を取り上げていきたい。

 第1回は、昨年11月10日、悪性リンパ腫のため、83歳で亡くなった“昭和の名優”高倉健の名作のなかからセレクトしたい。

 高倉が映画に出演した本数は実に205本。テレビドラマにはほとんど出ず、映画人として人生をまっとうした高倉が遺した名作は数えきれない。そのなかで、81年11月に公開された「駅 STAION」(東宝/監督=降旗康男/脚本=倉本聰)も忘れられない作品だ。同作は82年の第5回日本アカデミー賞で最優秀作品賞に選ばれ、高倉自身も最優秀主演男優賞を受賞している。

 高倉の役どころは北海道警の警察官で、五輪にも出場した射撃選手である三上英次。舞台となっているのは北海道の札幌市、増毛町、雄冬岬。同作は3つのパートに分かれており、それぞれ、マドンナとなる女優が登場する。1つ目のパートは、「1968年1月 直子」。英次は警察官としての激務と、射撃選手としての厳しい練習が続いたことが原因で、妻・直子(いしだあゆみ)との離婚を決意。

 作品のスタートとなるのは、銭函駅のホーム。離婚を承諾した直子は、4歳になる息子・義高を連れて、英次に別れを告げる。息子にせがまれて、英次は駅弁を買って渡す。列車に乗り込んだ直子は涙を流しながらも、つくり笑いをして敬礼をし、列車は出発した。

 傷心のなかで、検問中に上司である相馬が、連続警察官射殺犯「指名22号」森岡茂(室田日出男)に射殺される。犯人を追いたい英次は敵討ちを願い出るが、中川警視(池部良)から「オマエの担当は五輪だ。これは道警本部長の命令だ。全警察官、いや日本人すべてがオマエに期待してる」と諭され、悔しい思いをする。

 2つ目のパートは、「1976年6月 すず子」。英次の妹・冬子(古手川祐子)は、英次の幼なじみである義二(小松政夫)と恋仲だったが、伯父が勧めた見合い相手と結婚する。失恋した義二は結婚式の夜、荒れる。英次は冬子の選択に戸惑いを感じるのだった。

 当時、英次は五輪の強化コーチで、赤いスカートの女ばかりを狙う通り魔犯を追っていた。犯人として浮上したのは吉松五郎(根津甚八)で、妹のすず子(烏丸せつこ)は増毛駅前の風待食堂で働いていた。すず子は町のチンピラ・木下雪夫(宇崎竜童)と付き合っていたが、雪夫にとって、すず子は遊び相手にすぎなかった。

 すず子を張り込んでいた英次は、バーで雪夫に出くわして因縁を付けられ、ケンカを吹っかけられるが、その仲間とともに叩きのめす。英次が警察官と知った雪夫は、すり寄って協力を申し出た。

 雪夫に口説かれたすず子は五郎と会う約束をするが、雪夫と英次は内通していた。すず子は警察に張り込まれていることに気付きながらも、待ち合わせ場所の上砂川駅に向かい、そこに現れた五郎は逮捕される。そんな折り、英次はコーチの職を解任されたことを通告される。原因は選手たちの造反だった。

 79年、6代目クラリオンガールに選ばれ、芸能界デビューした烏丸は、当時のグラビア界を席捲。女優として、映画に進出したが、同作出演時26歳で、そのあどけなさが印象的だった。同作で烏丸は日本アカデミー賞で優秀助演女優賞を受賞している。

 3つ目のパートは、「1979年12月 桐子」。英次は年末年始の帰省のため、故郷・雄冬に向かう。英次は警察官を辞めることを決意していた。12月30日、雄冬への連絡船はしけのため欠航。立ち寄った増毛駅前の食堂では、まだ、すず子が働いていた。

 英次は居酒屋「桐子」に入り、店主の桐子(倍賞千恵子)と意気投合。翌31日も連絡船が出ないため、2人は留萌へ行き、映画を見て、その後、男と女の関係になる。増毛に戻り、いったん旅館に帰った英次だが、桐子から「『紅白歌合戦』を一緒に見ようよ」と誘われ、「桐子」へ。英次は自身が警察官であることを、桐子に話さなかった。テレビから流れる八代亜紀の「舟唄」が、エンディングでも流されており、同作のなかで強烈なスパイスとなっている。

 年が明け、2人はそのまま初詣へと向かうが、そこで桐子を見つめる一人の男の姿を英次は見逃さなかった。元日、ようやく雄冬に帰省した英次は弟・道夫(永島敏行)から、元妻・直子と息子の義高と会ったことを告げられた。直子は池袋のバーでホステスをして、義高を育てているという。道夫から連絡先を渡された英次は12年ぶりに直子と話す。

 認知症となっていた母・昌代(北林谷栄)に見送られ、英次が連絡船で増毛に戻ると、桐子が待っていた。札幌に帰る途中の留萌駅で、英次は警察官から職質を受けて身分を明かし、増毛で警察官が襲われたことを知る。女の声で「犯人は指名22号」とのタレコミがあったと聞いた英次は、気になって増毛に戻り、桐子のアパートへ向かう。

 そこには指名22号の森岡が潜んでおり、拳銃を撃とうとした森岡を桐子の前で射殺。上司・相馬の仇討を12年越しでする格好になった。

 札幌に帰る前、英次は「桐子」に立ち寄ったが、桐子はよそよそしい態度だった。列車に乗る前、増子駅で英次は退職願を破って、ストーブに入れて燃やし、警察官を続ける決意をする。帰りの列車には、札幌で働くことになったすず子も乗っていた。

 英次に心を動かされながらも、惚れた男である森岡のことを忘れられず、自ら警察に通報しながら、かくまった桐子の複雑な女心が印象的な作品だった。高倉と倍賞は何度も共演しているが、同作での倍賞の演技もまた出色で、この映画を名作へと導いた功労者だ。

(坂本太郎=毎週金曜日に掲載)

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