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「生活保護不正受給」法整備の裏で個人情報ダダ漏れの危険(1)

 フジテレビ系列の人気バラエティー番組『人志松本のすべらない話』の中で、「犬のタロ吉」「姉がレズ」などの話を披露し“家族話の達人”と異名を取ったお笑いコンビ『次長課長』の河本準一(37)。名作の「おかん」シリーズでは、母親が河本にカネをせびるシーンをコミカルに語っていたが、まさか国に対してもカネをせびっていたとは…。
 まさに『すべらない話』だが、受け取る側以上に、こんなユル〜い支給実態の方こそが問題だと指摘する人は多い。しかし、この制度、実は“個人情報ダダ漏れ”になりかねないという恐ろしい“解釈”が隠れているのだ!

 厚生労働省が5月16日に発表した「福祉行政報告例」によると、平成24年2月時点の生活保護受給者は209万7401人。8カ月連続で過去最多を更新しているという。当然それに伴って、予算としての生活保護費も過去最高額に。歳出削減、経費削減が叫ばれる中でも削られることはない。
 生活保護は日本国憲法第25条が保障する生存権に基づき、生活困窮者が健康で文化的な最低限度の生活を保障するとともに、自立を手助けすることを目的とした制度。収入と厚生労働大臣が定める最低生活費を比較して、最低生活費から収入を差し引いた差額が保護費として支給される。
 最低生活費を決定する上で最も大きな割合を占めるのが生活扶助基準額。たとえば東京都区部に居住する標準3人世帯(33歳、29歳、4歳)で17万2170円、高齢者単身世帯(68歳)では8万820円と細かく定められているが、1世帯で20万円前後の生活保護を受給することも可能なのが、今の日本の現状なのだ。

 厚労省東京労働局が定める東京都の最低賃金は、1時間あたり837円。20万円稼ぐには239時間働く必要がある。しかし労働基準法によると「使用者は原則として1日に8時間、1週間に40時間を超えて労働させてはならない」とある。仮に、1カ月に20日、8時間、最低賃金で働いたとすると、1カ月に得られる収入は13万3920円。もちろん、「最低賃金かつ手当なし」で就労するケースは考えにくいが、この数字をみて働く気を失う人がいても不思議ではない。
 生活保護受給者が一向に減る気配を見せないのは、このように萎えてしまう場合のほか、受給者から不当に搾取をする、いわゆる“貧困ビジネス”や、医療扶助の不正受給などに旨味を見出す悪い奴らが後を絶たないからだろう。
 厚労省のまとめによると、発覚した生活保護の不正受給件数は、平成22年度で2万5355件。総額も約128億7400万円にのぼり、厚労省としても不正受給根絶のために何らかの施策を打たざるを得ない状況に追い込まれている。

 もっとも、この件数と総額はあくまで発覚した数字であり、水面下で不正受給している人はこの何倍もいるとみられている。
 「そもそも、○○党員とか△△学会員など、有力団体に属している人からの申請があった場合、あとでもめると面倒なので、ほとんどフリーパス」(関係者)という現状では、不正受給を発見できなくて当然か。
 生活保護費削減の提唱は「弱者切り捨て」と受け取られる可能性が高く、「選挙で不利になる」という理由などから国会等、公の場で議論されづらかったことが、ここまで不正受給を助長させた背景の一つだろう。しかし、財政が逼迫している日本において歳出削減は急務であり、生活保護費の見直しは、もはやタブーではない。

 こうした背景を受け、厚労省はようやく重い腰を上げた。生活保護の決定・実施のために福祉事務所が行う調査を、より強化することが検討されているのだ。
 生活保護法の第29条に「保護の決定又は実施のために必要がある時は、要保護者又はその扶養義務者の資産・収入状況の報告を金融機関に求めることができる」とある。この権利をフル活用し、不正を何とかなくそうというのである。
 たとえば生活保護申請を受けた福祉事務所が、当該人物が口座を保有している可能性がある金融機関の本店に一括照会を行い、資産内容を報告させることによって確認漏れを防ぐ。実際、厚労省と協議を行った全国銀行協会は「口座の有無、口座が有った場合にはその取引店および調査時点の残高の2点を、本店一括照会により報告する」との方針を示した。

 このまま正式に決定されれば、福祉事務所による徹底調査が行われる土壌が整う。さらに福祉事務所が「不正受給の疑いがある」とした場合には、前述2点に加え「口座の異動明細(入出金記録)」の報告も取引店に要請することができるという補足的な権利も明記しており、福祉事務所が不正受給根絶に向けて大きな力を持つことになる。
 しかし、これで不正にカネを得ようとする奴らを一掃できると、喜んでばかりはいられない。実は、この法解釈を悪用せんと企んでいる輩もいるのだ。それは、俗に“探偵”と呼ばれる調査会社である。

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