週刊新潮は、13日に福田次官のセクハラ発言の音声データを公開している。政府関係者によると、福田次官も音声が自分のものであることを認めているし、音声鑑定でも、福田次官の声にほぼ間違いないという結果が出ている。それにもかかわらず、財務省と福田次官がセクハラを全否定する根拠は、一体何なのか。
福田次官は、「業務時間終了後、時には女性が接客をしているお店に行き、お店の女性と言葉遊びを楽しむようなことはある。また、仲間内の会話で、相手から話題を振られたりすれば、そのような反応をするかもしれない」として、週刊新潮が公開したセクハラ音声が、本当に女性記者に対して向けられたものか分からないとしたのだ。
そうした主張を踏まえて、財務省は記者クラブに対して驚愕の要請を行った。福田次官との間で、週刊新潮が報じたやりとりをした女性記者に名乗り出て欲しいと言い出したのだ。
それは、無理な相談だ。財務省が強大な権力を握っているからだ。19日、テレビ朝日はこの女性記者が同局の記者であることを発表したが、次官のメンツを潰したテレ朝は、今後、財務省から情報提供を受けにくくなる。また財務省は、予算をはじめとする重要情報を握っているから、財務省に睨まれると、ニュースソースの面でも非常に厳しい状況に置かれてしまう。さらに、財務省に不都合な行動をすると、税務調査が入ってくる可能性もある。
セクハラを受けた女性記者も当然そのことは分かっている。だから、セクハラの事実をテレ朝で報じることをせずに、週刊新潮にリークしたのだろう。記者クラブに属さない週刊新潮は、財務省に干されても、痛くもかゆくもないからだ。
テレ朝は、女性記者の保護を目的に、個人が特定できる情報は開示しないとしており、今後、財務省に対し正式に抗議を行う方針だ。一方、そのテレ朝の会見直前に麻生財務大臣が発表したところによれば、福田次官からは「職責を果たすのが困難になった」との申し出があったという。
しかしこれで、さらに財務省は有利になった。福田次官をかばった安倍政権への国民の批判が拡大し、政権崩壊の可能性が高まったからだ。
安倍総理が政権を維持し、憲法改正を実現するための最後の切り札は、消費税率の5%への引き下げだ。しかし、政権批判が続く中で、そうした行動に出れば、国民の目には、保身のために引き下げを打ち出したように見えてしまう。切り札が出しにくくなるのだ。
おそらく財務省は、安倍総理への追及があと半年続けば、時間切れで消費税の10%への増税が達成できると踏んでいるだろう。そして、福田次官のセクハラが確定しても辞任までにとどめ、巨額の退職金と天下り先を確保するはずだ。福田氏は、安倍政権を追い詰めた功労者だからだ。