そんな中、本誌に飛び込んできたのが、「ソフトバンクが9月中に大型トレードを敢行する」との情報だ。それも9月3日に国内FA権を獲得したばかりのヤクルト・山田哲人(28)狙いというから驚く。
新型コロナウイルス感染症の影響により、今季のセで、プレーオフは実施されない。既に自力優勝の可能性が消滅した最下位ヤクルトの現状を見越して、ソフトバンクが緊急獲得の準備を進めているというのだ。
「国内FAの場合、日本シリーズ後に獲得に乗り出すのが決まりだが、今季はコロナの特別措置でトレード期間が9月末まで延長され、事情が大きく変わっている。FAではなく、9月中に山田を“トレード”で獲得すれば、ペナント奪回ばかりでなく、4戦3勝(1位チームに1勝のアドバンテージ)で優勝を決める上位2チームのプレーオフにも寄与する。意地でもロッテを打ち負かして日本一を目指すソフトバンクの究極の作戦だ」(スポーツ紙デスク)
背景にあるのが、今季が3年契約の最終年となる、井口資仁監督の大仕掛け。9月7日に巨人・澤村拓一投手(32)をトレードで獲得し、チームの士気を一気に高め、ソフトバンクに宣戦布告したことだ。
なぜこのトレードが宣戦布告にあたるのか。巨人OBの野球解説者が語る。
「今季の澤村の年俸が1億5400万円なのに対し、巨人が獲得した香月一也内野手(24)は650万円です(金額はいずれも推定)。その差1億4750万円という“超格差トレード”であることに加え、巨人には亀井善行、丸佳浩、重信慎之介、立岡宗一郎と左打者の層が厚く、一軍実績に乏しい香月の出番はそうそうありません。つまり、逆転優勝を目指す井口監督が巨人の三軍でくすぶっている澤村に目を付け、原辰徳監督に“レンタル”を熱望したのです。今年、楽天からロッテにFA移籍した美馬学投手は澤村の中大時代の2年先輩で、当時の中大監督は巨人OBの高橋善正氏。近い将来、巨人は中大OBの阿部慎之助二軍監督が昇格すると見られています。その“中大ライン”を活かして、澤村を一時預からせて欲しいと。どのみち、原監督と澤村は反りが合わず、戦列復帰は難しい。球団も高額な未使用物件を抱え続けるより、ロッテに選手報酬の支払いの肩代わりをしてもらった方が良策と判断したのでしょう。来季年俸も合わせ、当面『1.5億円』節約できるわけですから」
事情はどうあれ、巨人が結果的にロッテに“加担”したことで、ソフトバンクは大激怒。山田の獲得計画には「ロッテ封じ」とともに巨人への「報復意図」が込められている。
「ソフトバンクと巨人は、日本シリーズばかりでなく、今秋のヤクルト・山田のFA争奪でもぶつかり合います。前倒しての報復という構図です」(同)
ヤクルトは9月19日から入場者数を約1万4500人に引き上げるが、それでもコロナの影響で30億円超の赤字は必至。山田が今オフに国内FAを宣言してチームを離れるなら、ポスティング移籍を認めてアメリカ・メジャーリーグに売り飛ばしたいのが本音に違いない。
しかし、米球界もコロナの打撃で緊縮財政にあり、巨人の菅野智之投手を除くと高額の入札金は望めない。
「メジャーでは、’17年にレンジャーズからドジャースにトレードされたダルビッシュ有のように、FAイヤーの選手の途中放出は珍しくない。ポストシーズンに進めないと判断した球団は、その選手をトレードし、見返りを得るのが常套手段。日本では前例はないが、今季は特別。ヤクルトも今、山田を放出すれば、来季分も含めおよそ10億円が節約でき、優秀な若手有望選手が得られるという策略です」(前出・デスク)
山田にとって、移籍しても来季中に海外FA権(9年)が獲得でき、ソフトバンクなら’22年シーズンにもメジャー挑戦ができる。その点、長期契約が前提の巨人では難しい。日米の球界情勢が不透明なだけに、どちらにも進路が取れるソフトバンクへの移籍は渡りに船なのだ。今季、メジャーに移籍した筒香嘉智(レイズ)、秋山翔吾(レッズ)が苦戦していることも、様子見の要因になっているという。
今季のソフトバンクは、’15年に山田とともにトリプルスリーを達成した柳田悠岐こそ好調だが、昨季30本塁打の主砲・松田宣浩が不振で、チームリーダーの内川聖一も二軍暮らしが続いている。二塁手は定着しておらず、牧原大成、川島慶三、周東佑京が日替わりで出場しているが、ここに山田が加われば柳田との「トリプルスリー・コンビ」が誕生する。その破壊力と人気は計り知れない。
反骨心に火が付いた澤村を得て、ロッテは唐川侑己、ハーマンから守護神・益田直也につなぐ勝利の方程式がさらに充実した。
この堅固な要塞を打ち砕くためにも、トリプルスリー・コンビの完成は欠かせないのだ。