「感染の広がりを調べるため、厚労省は人口の多い自治体のうち、感染者数が多い東京と大阪、少ない宮城を調査の対象地域としました」(サイエンスライター)
この結果を見る限り、いずれの地域でもほんどの人が抗体を持っておらず、秋以降に予想される第2波の感染拡大が大いに懸念されるのだ。
医師で作家の外岡立人氏が言う。
「新型コロナウイルスは、もともと抗体ができづらいウイルスなのかもしれない。ニューヨークであれだけ酷い状況になったにもかかわらず、抗体の陽性率は14%ですから。とはいえ、抗体を持っていても、感染しないとも言い切れない。未知のことが多いウイルスなので、誰も『こうだ!』と断言できないんですよ」
コロナの撲滅は困難とし、ある程度共存を図りながら拡大を抑制していく…そんな感染者数を可能な限り抑え込んだ日本の対策と、真っ向から挑み撲滅を図ろうとした欧米各国における新型コロナ対策の違い――。
「欧米では戦争と同じ発想で新型コロナ撲滅に挑み、失敗した。一方、全体を見て共存を図りながら、対策を進めてきた日本やアジアにおける対策は成功し、新しい生活様式の創造まで生み出した」(外岡氏)
ハーバード大学の研究者は劇的な対策がない限り、米国での新型コロナ感染による死者数は今年10月までに20万人に達するとの予測を示した。中でも、ニューヨークのコロナ死者は2万人以上となり、黒人が圧倒的に多い。
「黒人は予防対策と十分な医療を受けられず、被害をまともに被っている。アメリカでは悲惨な観測まであるが、日本ではどうか。いくつかのシナリオの中には、抗体を持っていないことから感染が広がり、それがインフルエンザと被って悲惨な状況を呈するとの見方もある。しかし、呼吸器の感染症は2種類の異なったウイルスが同時に流行するとは考えにくい。インフルエンザも香港型と、かつての新型インフルが毎年入れ替わるようにして流行するように、コロナとインフルエンザが同時に流行することは考えにくいと思いますね」(外岡氏)
コロナを抑え込んだ他の成功事例は南半球のオーストラリアとニュージーランドで、両国は今まさに冬季に入ったところだ。
ニュージーランドのアーダーン首相は新型コロナウイルスの感染を防ぐための行動規制について、6月9日から外国人の入国制限以外はすべて解除すると発表した。これによって大規模集会が可能となり、店舗の利用者の人数制限などもなくなった。
「新型コロナの警戒水準でレベル2から1番下のレベル1に下げた。政府はかぜのような症状ならば検査を受けるように求め、感染経路を追跡しやすくするため、スマートフォン用の感染追跡アプリの利用も勧めています」(現地特派員)
外岡氏によれば、今のところインフルエンザの流行は見られないそうだ。
「日本は現在、新型コロナは小康状態にあるが、少しずつ変異し、波状に流行を繰り返していきます。米国の専門家の予測では7〜8月には感染者数が最低になるものの、9月からは一気に感染者が増え出し、10月には第2波として宣言されるとの読みです。先ほど申し上げているように私の見解とは違うが、最悪のストーリーは新型コロナとインフルエンザが被ってくることです。大切なことは、自分以外はウイルス感染者、またはウイルスそのものと認識して、ソーシャル・ディスタンスを取ることです。どこにウイルスが存在するのか、イメージトレーニングも必要です。第2波ではウイルスの悪性度が高まるとの予想もあります。100年前のスペイン風邪では第2波で致死率が倍近く上がっている地域もあったほど」
幸い、今回の新型コロナ第1派で日本国内における流行の規模は小さかった。日本の感染者が少なかったのは、衛生意識の高いことに加え、クラスター(集団感染)分析によって感染者のうち2次感染を5分の1程度にとどめるなど、日本独自の対策が挙げられる。
ただ、前述したように、抗体がある人でもそれがどれくらい持続するのか、本当に感染を防ぐことができるのか、分かっていないのである。それだけに、対策を緩めることは即再流行に繋がり、社会が混乱する。
6月18日、東京都では新型コロナの感染者が新たに41人確認されたことが判明した。
「都内で1日あたりの感染者が40人台になるのは、15日の48人以来3日ぶりでした。皮肉なことに18日は東京都知事選(7月5日投開票)の告示日。小池都知事は『東京アラート』から経済優先に舵を切った。約1兆円とされる都の貯えもコロナ対策でほぼ遣い切った。コロナ第2波を含め、今後、どのような影響を及ぼすのか気掛かりですね」(全国紙都政担当記者)
新たな感染者として「夜の街」がクローズアップされている。対策を緩めれば、気も緩む。それはある程度、やむを得ないが、トバッチリを食うのは弱者である。