小池百合子東京都知事は12日に東京アラートを解除し、接待をともなう飲食店についても、19日からの営業再開を認める方針を固めた。しかし、以前から繁華街の多くの店は、休業要請が継続されていたにもかかわらず営業を再開していた。
再開した店に共通する言い訳は、「経営や従業員の生活を考えたら、もう休業を続けることはできない」というものだ。国の持続化給付金は一度きりだし、東京都が独自に用意した自粛の協力金も5月分までで終わってしまった。これ以上、休業を続けたら会社がもたない。その通りだろう。では、どうしたらよいのか。
実は、最近になって地域別の感染構造が変化してきている。6月2日からの1週間に、全国で278人の新規感染者が確認されたが、そのうち53%の147人が東京都だった。
つまり、全国で感染が収束しつつあるなかで、東京だけが突出しているのだ。極論すれば、コロナ問題が「東京問題」になりつつある。
東京で感染が収束しない原因は、夜の街だけではないと私は考えている。それは、満員電車だ。緊急事態宣言が解除されて以降、東京では満員電車が復活している。映画館から飲食店まで、1メートル以上の社会的距離を取るべきとされるのに、なぜか電車だけは完全な「3密」が放置されている。
もちろん、いまのところ通勤電車でクラスターが発生したという事実はない。しかし、それは、接触が特定しにくいからではないのか。現在、ラッシュ時の東京の通勤電車は、座席がすべて埋まって、それと向き合う形で、つり革につかまる乗客がびっしりと並んでいる。誰がどう考えても危険な状態が、毎日、繰り返されているのだ。
だから、私はもう一度、東京に休業を求めるべきだと思う。もちろん、その時は、しっかりと休業補償をする。全国でやったら財政的に厳しいが、東京だけにコロナ対策の費用を集中させれば、問題なくできるだろう。
そして、その期間は、東京に行ってはいけない、東京から出てはいけないと、県境移動を厳しく抑制する。そうすれば、全国に感染が広がることはない。移動を制限すれば、東京の電車もすくはずだ。
一方で、収束が見えてきた東京以外の道府県は、思いきって自粛を解除する。東京のGDPが全国に占める割合は2割だ。それが半分程度に落ちたとしても、日本経済の9割が元に戻ることができるのだ。
ただ、こうした発想は、絶対に出てこない。それは、霞が関の役人も、財界人も、メディアの人間も、政治家も、大部分が東京の住人だからだ。
しかし、発想を変えて東京を収束させないと、いずれ東京で大きな第2波が発生して、2度目の自粛に追い込まれる。全国はその道連れになってしまうだろう。いま求められているのは、東京の感染を短期で収束させることなのだ。