教育映画は小学生向けの科学や道徳、交通事故の危険性などを訴えた映画がメインなのだが、時には担当する監督の作家性が爆発し、物議を醸すこともある…。
1965年、ある教育映画を専門とする映画製作プロダクションが、『悲しみの記録』というタイトルの短編映画を製作した。
『悲しみの記録』は、交通事故をテーマにした30分の映画で、全国の自動車教習所などに売られたという。
しかし、この『悲しみの記録』という作品だが、内容はかなり攻めたもので、30分の放送時間の間に、交通事故によって死亡した人間の死体が6体も大写しにされるというものであった。
そのため、教習所では上映している最中に気分が悪くなったり、退室する人が相次ぎ、問題になったこともあるという。
本作はカラー作品であり、血の色などが鮮明で、腕がちぎれたり、潰れた顔を手術するシーン、小さな子供が事故に遭った写真や映像、葬式の映像などが次々に映し出されていたという。
当時の製作者によると、「交通事故の真実を伝える」というメッセージがあったといい、多くの過激なシーンの挿入は意図的なものだったという。
本作は、一般の映画館では上映されない作品だったため、実際に鑑賞できた人は限られているが、当時鑑賞した人は、ショッキングな映像の数々に強い衝撃を覚えたといい、次第に本作は上映されなくなっていったという。
いくら教育映画と言えど、「やりすぎ」は良くないというサンプルではなかろうか。
文:穂積昭雪(山口敏太郎事務所)