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世の中おかしな事だらけ 三橋貴明の『マスコミに騙されるな!』 第353回 アベ・ショックが始まった(後編)

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提供:週刊実話

 18世紀に活躍したジュネーブ共和国出身の政治哲学者ジャン・ジャック・ルソーは、名著『社会契約論』に、「人民が減り、衰微してゆく政府が最悪の政府である」と、書いている。

 日本の安倍晋三総理大臣は、憲政史上「最も国民の実質賃金を減らし」「最も国民の実質消費を減らし」そして「最も出生数を減らした」政治家であり、ルソーの定義に従うと「最悪の政府、三冠王」なのである。

 前回、前々回と、2019年10月の消費税増税により、実質消費は(当然のことながら)下がり、さらには速報値段階ではプラスだった実質賃金も、確報値でマイナスに落ち込んでしまったことを解説した。とはいえ、第二次安倍政権発足以降、実質賃金も実質消費も継続的に下落してきたのだ。’19年10月増税は、下りのペースを「速めた」というのが正確な表現である。

 もっとも、賃金や消費以上に強烈だった「ショック」は、’19年の出生数が90万人を割り込み、人口の自然減が50万人を上回ってしまった事実である。

 特に第二次安倍政権発足以降、日本の出生数は急減。政権ごとの出生数増減率を計算してみると、安倍政権期の「マイナス」が文句なしでナンバーワンだ。

 日本の少子化の原因は「既婚女性が産む子供の数が減っている」ことではない。有配偶女性一人当たりの出生数(有配偶出生率)を見ると、中期的には回復傾向にある。つまりは、保育所の待機児童解消や幼児教育・保育の無償化は、別に不要とまでは言わないが、少子化対策としてはほとんど役に立たない。

 日本の少子化は、結婚の減少により引き起こされている現象なのだ。信じがたい話だが、今や50歳男性の25%が「未婚」という事態になってしまっている。1970年はわずかに1.7%だったため、衝撃的なスピードで「非婚化」が進んだことが分かる。

 ちなみに、日本の若者の結婚願望は、際立って高い。男女ともに、未婚者(18〜34歳)の9割近くが「いずれ結婚するつもり」と答えている(データはいずれも「令和元年少子化対策白書」)。

 そして、日本の結婚適齢期が結婚しない理由もまた、データから明らかになっている。
(1)所得水準の低下
(2)東京一極集中

 日本の男性は、雇用が安定し、所得水準が高ければ、普通に結婚している。逆に、不安定雇用で所得が低い男性は結婚できない。雇用環境や所得水準により、ほとんど「階級」ができてしまっているのが現在の日本だ。多くの若者にとって、結婚は今や「贅沢品」と化している。

 さらに、日本の地方の若者は、よりによって「出生率が最低」な地域、すなわち東京圏へと移動してきている。’18年に至っても、1年間で13万5000人が東京圏に流入した。当然ながら、若い世代が中心であろう。出生率の高い地方から、低い東京圏に人口が移ってきているのだ。少子化が進んで当然である。

 問題は、所得水準の低下や雇用環境の悪化、東京一極集中は、安倍政権の「政策」により引き起こされているという点だ。何しろ、安倍政権は緊縮財政を続け、実質賃金低下をもたらすデフレーションを解決しようとせず、雇用規制はひたすら緩和。さらには、地方の公共投資を削減し、東京圏に「選択と集中」をしている。つまり、現在の日本の少子化は宿命でも何でもない。政策的な必然なのである。

 というわけで、日本の少子化を本気で解決したいならば、政策は実質賃金引き上げと東京一極集中の解消が中心にならざるを得ない。具体的には、以下になる。
(1)移民を入れない
(2)緊縮財政から転換し、公共投資の「選択と集中」を中止し、地方を中心に交通・防災インフラを整備する
(3)医療・介護・土木建設など、政府が労務単価を引き上げられる分野の支出拡大
(4)非正規の公務員をすべて正規化する
(5)労働規制を強化し、実質賃金引き上げを目指す
(6)政府が企業の生産性向上の投資を全面支援
(7)東京から地方への家計・企業の移動を免税・減税政策を推進

 よくよく考えてみると、上記は「安倍政権が拒否し続けている」正しいデフレ対策そのまんまだ。いや、拒否というよりは、安倍政権は「真逆」の政策を猛烈な勢いで推進しているのだ。移民受け入れを拡大し、緊縮財政を続け、公共投資は東京圏に選択と集中。診療報酬、介護報酬を引き下げ、公共事業の労務単価上昇も抑制に懸命だ。地方交付税交付金を減らし、公務員の非正規化を進め、労働規制はひたすら緩和。派遣労働や不安定なフリーランス(個人事業主)を増やし、「高度プロフェッショナル制度」なる残業代ゼロ制度も導入。企業に口先で生産性向上を求めるものの、政府はカネを出さない。東京から地方へ移転した際の減税政策は、多少はあるが、不十分である。

 つまり、少なくとも日本においては「少子化対策=デフレ対策」になるのである。そして、安倍政権はデフレ対策ではなく「デフレ化政策」ばかりを推進する。結果的に少子化のペースが加速した。当たり前すぎるほど、当たり前の結果ではないか。

 楽観論を書きたいわけではないが、少子化・人口減は日本復活の「鍵」になりえる。つまりは、日本における「正しいデフレ対策」が、そのまま「正しい少子化対策」であることを理解するのだ。そして、デフレ化、少子化を推進する安倍政権のグローバリズムを食い止めるべきだ。

「少子化、人口減少に危機感を持つならば、グローバリズム的政策を転換しなければならない」

 この事実だけでも国民に共有されれば、希望が見えてくる。逆に、このままデフレ化政策が続く場合、将来的な日本人消滅が確定する。

 まさに、歴史の教科書に残すべき「アベ・ショック」ではないだろうか。

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みつはし たかあき(経済評論家・作家)
1969年、熊本県生まれ。外資系企業を経て、中小企業診断士として独立。現在、気鋭の経済評論家として、分かりやすい経済評論が人気を集めている。

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