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本好きのリビドー

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提供:週刊実話

 悦楽の1冊『伊四〇〇型潜水艦 最後の航跡』ジョン・J・ゲヘーガン/秋山勝訳 草思社文庫(上・下) 1320円(本体価格)

★巨大潜水艦の航跡のすべてを描く

 先の大戦史をひもとくたびに、軍艦好きとして切歯扼腕するほかないのは敵に“マリアナの七面鳥射ち”と嘲笑されるほどの惨敗に終わった昭和19年のマリアナ沖海戦。全将兵の期待を一身に担って初陣を飾りながらも実に呆気なく撃沈の憂き目に遭う新鋭空母「大鳳」や、その初陣すら味わわせてもらえず海底に消えたやはり空母の「信濃」(もとは戦艦「大和」型の3番艦という巨大さ)の残念な最期っぷりが、幼心にやり切れなかった。

 しかもマリアナでその時、米軍が徹底的に駆使した対空レーダーの基礎技術には、かつて大正時代に日本で開発されたのに軍が本格的に注目しなかった八木・宇田アンテナの発想がまるまる活かされていたのだとか。おまけに広島、長崎への原爆投下の際にも、核爆発の高度を特定するため同様に利用されたとまで聞けばなおさら、粛然と声も出ない。不穏当な表現をあえてするなら、いったいどれだけ宝を持ち腐らせりゃ気が済むのだと、毒づきたくもなるだろう。

 死んだ子の年を数えるようでも、せめてあの新兵器がいま少し早く戦線に投入できていれば、アメリカに一矢も二矢も報いて目にもの見せてやれたものをと、精神的に地団駄を踏みたくなる“幻のアイテム”は決して少なくない。中でも空の代表がB29の倍近い巨体で無給油で太平洋を横断、米本土を空襲する構想のもと設計された超大型爆撃機「富嶽」なら、海のそれは山本五十六連合艦隊司令長官の大胆な戦略に基づく世界発の潜水空母「伊四〇〇型」の建造にとどめを刺す。

 日米双方で緻密に重ねた取材を背景に、圧倒的な面白さで読ませる興奮の上下巻。米海軍を戦慄させ、後の原潜に深甚な影響を与えたのも技術立国・日本だった事実に、静かに涙。
_(居島一平/芸人)

【昇天の1冊】

 1月19日からNHKの大河ドラマ『麒麟がくる』がスタートする。主人公は明智光秀。本能寺の変で主君・織田信長を殺した“謀反人”の印象が強い武将が、どのようなヒーローとして描かれるか注目される。

 その本能寺の変には、光秀の背後で糸を引く“黒幕”がいたという説がある。黒幕は羽柴(豊臣)秀吉から徳川家康、朝廷、さらに信長に恨みを抱いていた宗教勢力など、これまでもさまざまな人物の名が取り上げられてきた。

 そうした異説・珍説をブッタ斬り、真実の光秀の姿と本能寺の真相に迫ったのが『本能寺の変に謎はあるのか? 史料から読み解く、光秀・謀反の真相』(晶文社/1600円+税)だ。

 ネタバレを避けるため、あえてここでは本書の結論には触れないでおきたい。だが、読み進めると飛躍した説も流布しているのではないかと、そう考えさせられる本である。

 当時の文献や関係者たちの直筆書状を丹念に分析し、虚構を剥がして真相に近づこうとしている。著者は株式会社歴史と文化の研究所代表取締役の渡邊大門氏。難しいテーマではあるが、分かりやすく、解説はとても読みやすい。

 さて、大河といえばエリカ様逮捕の影響で放送開始日が延期となるなど、何かとスキャンダラスな話題が先行中だ。そうした芸能ネタの視点でドラマを見るのも面白いだろうが、やはり戦国武将たちの人間像や生き様に焦点を当てて楽しみたい。そのための案内書として、うってつけの1冊である。
(小林明/編集プロダクション『ディラナダチ』代表)

【話題の1冊】著者インタビュー 小島和宏
憧夢超女大戦25年目の真実 彩図社 1,500円(本体価格)

★今年は女子プロレスブーム到来の可能性大

――1994年に行われた憧夢超女大戦は、女子プロレスブームの頂点といわれました。しかし、全23試合が終了したのは深夜。終電を逃した客があちこちで寝ていたそうですね。
小島 『闘いのトライアスロン』というキャッチコピーに引っ張られて、なんとなく“長いことが是”という空気感になっていたんです。とはいえ21時くらいには終わるだろうと思っていたら、段取りの悪さも手伝って、気が付いたら23時54分になっていました。それでも全女的には「日付をまたいでいないからセーフ」とのことです(笑)。

――この試合が、女子プロレスの終焉を招いた“A級戦犯”と言われています。なぜでしょうか?
小島 ドーム大会が動員的にも内容的にも、決して大成功ではなかったこともあって、そういう印象がついてしまったんですよね。今回、この本を書いたのは「それは違うよ」と再検証するためでもあったんです。
 実際は、東京ドームに到達する前にブームは下降線をたどっていましたが、その後、2年くらいは余韻でお客さんは入っていた。A級戦犯というのは言いすぎというか、正直、誤解だと思います。

――裏抗争、癒着、暴行トラブルなどのエピソードが連発しています。かなり生々しいですね。
小島 この本を読んだ選手も「まさか舞台裏でフロント陣がこんなヒリヒリした駆け引きを展開していたとは知らなかった」と驚いていましたよ(笑)。ちょっとでも妥協したら他団体に出し抜かれる、という危機感は常に漂っていましたし、ビックリするほど各団体間に信頼関係がなかったんですよ。にもかかわらず、東京ドームというビッグビジネスを成立させてしまったのもすごい話です。
 多分、リング上だけでなく、舞台裏の緊張感もファンに伝わっていたからこそ「こりゃ、この先、どうなるのか分からないぞ!」と煽られて、結果、大ブームに繋がったんでしょうね。

――ブシロードが女子プロレス界に参戦し、長与千種が“宣戦布告”したことが話題になりました。新たなブームが到来していますね。
小島 ブシロードの参入で’20年は確実に女子プロレスの露出が増大します。地上波のテレビ中継も復活しますし、これを突破口に令和初の女子プロレスブームが到来する可能性は大いにあると思います。さらには、再び長与千種が女子プロレスの中心軸に立とうとしていることにも驚かされました。昭和や平成の女子プロレスブームを体感してきた方にも、ぜひ注目してもらいたいですね。
_(聞き手/程原ケン)

小島和宏(こじま・かずひろ)
1968年10月、茨城県生まれ。’89年、大学在学中に『週刊プロレス』の記者としてデビュー。全日本女子プロレス担当を務めながら、FMW、W☆ING、みちのくプロレスなどインディー全体を追いかける。ももいろクローバーZの「公式記者」としても活躍中。

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