メタボの基準は以下となる。
(1)腹囲が85センチ以上(男性)
(2)高血圧(上の血圧130mmHg以上、下の血圧85mmHg以上)
(3)高脂血症(中性脂肪)150mg/dl以上(正常値50〜149mg/dl)
(4)HDL(善玉)コレステロール値:40mg/dl未満(正常値40〜70mg/dl)
(5)高血糖110mg/dl以上(正常値70〜109mg/dl)
このうち、二つ以上が該当する人はメタボとされ、中年男性の2人に1人が、この状態といわれる。
挙げた数字を見るまでもなく、メタボには「高脂血症=中性脂肪」「高血糖=糖尿病」「高血圧=高塩分血症」「高体重」のごとく、すべて「高」が付く病気ばかりで「栄養過剰病」、すなわち“食べ過ぎ病”である。
「腹八分目に病気なし、腹十二分に医者足らず」という諺がある。食べ過ぎは、ありとあらゆる病気の罹患者を増やし、いくら医者が増えても対処しきれない状態を招くということ。言い換えれば、人間は食べ過ぎると体内に余分な脂肪や糖分が増え、メタボリック・シンドロームの症状が起き、さまざまな病気の誘因や原因となるのだ。
『空腹が人を健康にする』(サンマーク出版)の著者で脳神経科医の南雲吉則氏は、「私たちの体の中には、飢えや寒さに適応できる仕組みが備わっている。過酷な環境を生き抜く進化の過程で“サバイバル遺伝子”を獲得してきたんです。この遺伝子が“飢えと寒さ”に置かれたときほど活性化するのです」と語り、著書の中でこう記している。
「私たちは、飢えに対して非常に高い適応力を発揮する力を獲得したが、急激な飽食状態に対しては無力であるばかりか、逆に生命力が有害に働く、ということです。私たちの体は飢えには強いけれども、満腹には適していない。約17万年に及ぶ人類の歴史は、飢えと寒さの戦いであって、その中でお腹一杯食べることができた時期は、わずか100年にも満たないのだということを、もう一度思い出してください」
現代では、1日のエネルギー消費量を上回る高カロリーの食事を、毎食、満腹(腹十二分)になるまで摂り続けている生活。この豊かすぎる食生活に適応できなくなってしまった人たちが、急激に体質の変革に迫られている。
食べ過ぎれば体脂肪が溜まり、どんどん太ってしまう。それも、際限なく食べ続けたらどうなってしまうか。ちまたには、100キロを超す巨体を誇る人も少なくない。そこまでは行かないにしても、新たに登場した“国民病”といわれる「糖尿病」を患う。
糖尿病人口は、すでに癌や心臓病患者を上回っている。戦後は、すべての国民がお腹一杯食べられる国を目指してきた。ところが、今では逆に、飽食が糖尿病を始めとするさまざま病気という形で我々の体を蝕む要因を作っているとしたら、何とも皮肉な話ではないか。