−−まずは映画の感想をお聞かせ下さい。初主演のプレッシャー、役作りと大変だったでしょう。
「普通の主演男優に比べたら、うんと楽でした。全部アドリブなので、台詞を覚えることも役作りの必要もない。撮影カメラが回っている時だけ頑張ればよかった。だから、楽しかった思い出しかないです」
−−自分だけ何も知らされず、打ち合わせ、リハーサルなしでいきなり2日間ぶっ通しの撮影に入ったそうですが、どこで役に入り込んだんですか。
「過去にテレビで何度もやってきているので、『キス我慢選手権大会始まりまーす』というタイトルコールから気持ちを切り替え、覚悟を決めました。気負うとうまくいかないので、リラックスを心掛けましたね」
−−現場では、スタッフ全員がヘルメットをかぶる物々しい一幕もあったとか。ひとりさんにも肘や膝用プロテクター装着が指示され、内心ビビリませんでしたか。
「何が起きるんだろうという不安はありましたが、怪我をすることはないだろうとは思いました。ただ振り返ってみると、怪我してもおかしくない環境でしたね」
−−それでも、爆破シーンの連続など危険と隣り合わせだったと聞いています。
「廃墟で武蔵さんとの格闘シーンで僕が倒れた時、ネジみたいなのが床から4本生えていて、危なかったのは覚えてます」
−−映画の画面でもネジはよく見えました。思わず「危ない!」と声が出る迫力でした。
「僕はそんなものがあるのさえ知らなかったんで(笑)」
−−完成披露会見で「アドリブの練習はせず、出て来る台詞は天性の才能」と自負してらっしゃいましたね。
「いやー、ちょっとシャレで言っただけです。恥ずかしがらず正々堂々とやれば、誰でも出来ると思います」
−−ひとりさんならではの卓越した才能だと思いました。
「恥を捨ててその世界に入り込めるんだったら、誰でも出来ると思います。どんな人でも自分がヒーローになったところを空想して、アドリブでものを言っているはずなんですよ。実際に声に出せるかどうかだけだと思うんです」
−−もしこの映画の台本に自分の台詞が書いてあって、アドリブ抜きだったら、満足感は違っていましたか。
「あれが全部台本に書いてあって出演依頼が来たら、多分断りますね。『こんなクサい台詞を言いたかないよ、俺』って。アドリブだから勢いで言えますけど、あの台詞を何回も練習して覚えるなんて、とてもじゃないけど馬鹿馬鹿しくてできない(笑)」
−−「作品を見て、自分の演技に満足した」ともおっしゃってました。仕上がりにはかなりの自信があるわけですね。
「そうですね。僕、基本的に自分のことを画面で見るのは、照れくさくなっちゃうんで、あんまり見られないタイプなんです。でも『キス我慢選手権大会始まりまーす』は面白く見れましたね」