社会 2025年08月06日 09時00分
水不足で今年もコメ高騰の予測、日本で「水田」は限界か 技術の進化で「乾田」に切り替えるとき
連日続く厳しい暑さ、そして記録的な水不足。農作物の生育に影響が出始めている。農林水産省が公表した主な野菜15品目の8月の卸売価格見通しによると、きゅうり、トマト、ピーマンなど「夏野菜」の高値が目立ち、例年より1~3割ほど高い見通しだ。農水省は7月30日、コメ卸や米穀店など43の事業者を対象にした精米の歩留まり状況の調査結果を公表したが、猛暑による高温障害などで精米の歩留まりが悪化している。今年もコメが不足して高騰しそうだとの声が早くも生産者から出ている。毎年続く猛暑は地球温暖化が主因であり、“異常気象”でも何でもない。おそらくは来年も再来年も、さらにずっと続いていくのだろう。だとすれば、従来の稲作方法、すなわち「水田」は日本の気候に合わなくなってきていると考えるべきではないか。日本の水田は6月頃の梅雨の長雨が前提となっているが、それはもう期待できない。また、限定した地域に集中して雨が降る近年の気象に、ダムのシステムは対応していない。3日朝放送のフジテレビ「日曜報道 THE PRIME」では水田から「乾田」へと切り替えている農業生産法人ヤマザキライス(埼玉県杉戸町)の取り組みをレポートした。水をはらない状態の田んぼに種をまいているので、畑のようにも見えるが、芽が出たあとも水をはらずに稲を育てる方法だ。代表の山崎能央さんは「ほとんど水を使わずに米づくりができるようになっている」と話す。同法人が取り入れているのは最先端の「節水型乾田直播(ちょくは)」で、使用する水は従来の200分の1だという。110ヘクタールの田んぼのうち、およそ10ヘクタールで“水をはらずに”コメをつくっている。乾田直播は、水田に水を張らず畑の状態のまま、稲の種子を直接播種(はしゅ)する栽培方法だ。メリットはいくつもある。育苗、代かき、田植えといった工程が不要となり、作業時間を大幅に短縮できる。育苗ハウスや田植え機などの初期投資が不要で、燃料費や人件費も削減できる。気になるのはコメの出来栄えだが、去年、山崎さんがこの方法で作ったコメの収穫量は、水田に比べて7~8%減ったとのことだが、多くが1等米の評価を得ていて、品質は良かったそうだ。乾田という稲作手法、実はこれまでもあったのだが、養分が不足して生育が安定しないのが課題だった。その課題は特殊な液体肥料の開発で克服できるようになった。稲は東南アジアの熱帯・亜熱帯地域が原産で、もともと温暖な地域で作られていた植物だが、品種改良や栽培技術の工夫で、新潟や東北、北海道などの寒冷な地域での栽培が可能となった。地球規模の気候変動が起きている以上、日本はテクノロジーで食料生産を解決する他ない。