A:歯を噛みしめると反射的に唾液を呑み込みます。そのときに一緒に空気も呑み込んでしまうから、げっぷやおならがたくさん出ると、一般的には説明されているようです。
この場合の“気”は、外気の空気です。例えば炭酸飲料をよく飲む人、早食いの人も、空気をたくさん飲むといわれます。
漢方には呑気症という診断名も症状もありませんが、私の見方は違います。呑気症の気は、外の気ではなく、胃の中に詰まっている空気です。その気がげっぷやおならとして出ます。
呑気症の人は、胃に気が滞っています。空気を呑み込むことにではなく、出すほうに、げっぷやおならの原因があると考えられます。空気を含めて胃に溜まったものが出ないでいるのです。
●胃の働きの調節が低下
生理学的には、胃の噴門が緩み開いてしまうことが原因です。つまり、胃の働きの調節がうまくいかないから、気や食べたものが胃に溜まるのです。
実際、おならやげっぷがよく出る人は、胃の調子が悪い場合が多いのです。ストレスが多い人によく見られますが、その理由は、ストレスによって胃の働きが低下しているからです。
ですから、歯を噛みしめるのは、ストレスを解消しようとする反応の一つです。ちなみに現代医学でも、呑気症はストレスの多い人、物事を気にし過ぎる人、うつ傾向の人によく見られると考えられています。
また、おならの原因の一つとして便秘が挙げられます。加えて、おならが出ることを気にし過ぎることも原因となります。女性に顕著ですが、おならのことを職場などで気にすることがストレスになり、それによって腸の働きが低下し、なおさら、おならをもよおします。
まずは以上のことを理解し、生活や心の持ち方を見直してください。その上で漢方薬を服用するとよいでしょう。
胃の消化を促進する『平胃散』と腸の張りを取る作用がある『桂枝加芍薬散』が効果的です。
三浦於菟氏(吉祥寺東方医院院長)
東邦大学医学部卒。国立東静病院内科勤務を経て、中国・南京中医学院、台湾・中国医薬学院に留学。東邦大学医学部東洋医学科教授を経て、同大学客員教授。著書『東洋医学を知っていますか』など多数。