A:舌診といって、東洋医学では診察の一つとして舌の形や状態を診ます。
表面の舌苔の他、舌そのものの色や形や大きさも重要な観察対象です。舌の裏も見ます。血管の様子や色など、さまざまな症状がそこに現れるからです。
普通、健康な舌は、淡い赤からピンクの中間の色をしています。そして舌苔は白く、苔の間から舌が透けて見えます。
口を大きく開けて、舌を下唇の少し下の辺りまで突き出してみてください。このとき、左右の口角に隙間が開いているのが正常です。他方、舌苔の間から舌が透けて見えず、苔が隙間なく付いているのは異状です。
舌を突き出したとき、左右の口角に隙間がないのは、舌がむくんでいるためで、これも異状です。ひどくなると、苔がびっしり生え、舌が厚くなります。
●胃腸が熱を持っている
舌苔には、色が黄色いものと白いものがあります。黄色い舌苔は熱証で、胃など内臓に熱を持っています。一方、白い舌苔は寒証で、特にこれといって体に異状がない場合もあります。
さらにもうひとつのチェックとして、舌の両端などに歯形(歯痕)が付いていないかどうかを見てください。もし付いているなら、これも消化不良の現れです。
もともと慢性的に消化機能が悪い人の場合、水分の吸収がよくないので、体に水分がたまる傾向があります。その現れの一つとして、舌がむくむため、歯形が付きます。
いずれにせよ、舌苔がたくさん付いているのは、胃腸が悪い場合が多いです。ご質問の方は、舌苔が黄色く、しかもお酒を飲むとのこと。おそらく、お酒をたくさん飲むことによる消化不良で、胃腸が熱を持っているのでしょう。
●お酒を減らし、消化の良いものを食べよう
ご質問の方は、しばらくの間、少しお酒を控え、消化の良いものを食べるようにしてみてください。食べ過ぎないことも大事。脂っこいものも摂り過ぎないようにしてください。
そして毎朝、舌と舌苔を観察してください。胃腸の機能が改善され、熱も取れてくれば、舌苔は減ってくるでしょう。
漢方薬では『平胃散』がオススメです。この漢方薬は胃腸の熱を取り、消化不良を改善する働きがあります。
三浦於菟氏(東邦大学医学部医療センター大森病院東洋医学科教授)
東邦大学医学部卒。国立東静病院内科勤務を経て、中国・南京中医学院、台湾・中国医薬学院に留学。日本医科大学附属病院東洋医学科助教授を経て現職。著書『東洋医学を知っていますか』など多数。