今年1月29日、和歌山市内のホテル宿泊客の男性2人が、サウナ風呂へ入ったまま出てこないため、従業員が調べたところ、2人は折り重なるように倒れており、警察が死亡を確認にした。
司法解剖を担当した和歌山医大の医師は、2人は脱水症で意識を失い、そのまま死亡したと診断。2人はサウナに入る前、飲酒していたらしい。
「こうした事故は年に何件か起きていますが、注意が必要です。とにかく食事の時や起床時、就寝前など1日8回、コップ1杯分程度の水分補給をするような心掛けが大切です」(久富院長)
しかし、水分といっても利尿作用が強いと言われる強いアルコールやビールは1リットル飲むと1.1リットルの尿が排出される。アルコール度数が高ければ、さらにその量が増えるといわれ、ノドが乾いたと思ってビールで水分補強しようとしても、逆効果、全く意味がないというわけ。
また、カフェインを多く含むコーヒー、お茶なども利尿作用が強く、体から水分を逃してしまう事に繋がり、結果的に水分不足、脱水症を招くことになる。
それでは、脱水状態に陥ってしまったら、どうしたらいいのか。
まず、その前に脱水症を見極めるところから始めなければならない。だが厄介なのは、体の水分が不足する脱水状態に陥っても、初期の段階は、ノドの渇きさえわからない、自覚症状というものがほとんどないので気付かない。
どうするのか。昔から言われていることの一つに、手の爪を押して、白からピンク色に戻るのに2〜3秒以上かかるか、また唇や舌の乾き、尿や涙の量などで見極めることが必要ということ。とくにオシッコの場合、水分不足になると出る量が極端に少なく、尿の色も黄色っぽくなるのが特徴。
さらに、知っておくべきは、寒い時でも、防寒対策で厚着もするし、体を動かせば汗もかく。その上、黙っていても目鼻、口、皮膚から水分が放出されている。
昭和医大烏山病院の泌尿器科担当医は説明する。
「冬の寒い時期に屋外に長時間いるとき、水分を補給しないままでいると人の体はどうなると思いますか? 体から水分が減るし、血管も縮まっています。その状態で逆に暖かい室内に移ると、血管が一気に拡張して血圧が低下します。すると脳内の血液循環が悪くなり、夏に起こる脱水状態と同じ症状が起きます。水分を摂らないでいれば、血液ドロドロ状態となり、脳梗塞や心筋梗塞に繋がる危険性が高まります」
入浴するにしても、寒い脱衣所と熱い湯船のある浴室との“温度差”を少なくする配慮が肝要。また入浴の前後に水をコップ1杯ほど飲むことも脱水症の予防になるはずだ。
医療関係者は、夏場は勿論だが、この冬の間も、人間の体液の成分に近い、水分と塩分を効率よく補給できる“経口保水液”を勧める。ある専門家は、この経口保水液を「飲む点滴」と評しているが、ノロウイルスなど感染症を防ぐうえでも重要と言い、家庭でも容易に作れると奨励する。
製法は、水1リットルに対し、塩3グラム、砂糖を20〜40グラム入れて、透明になるまでよくかき混ぜる。レモン汁入れると甘さが抑えられ飲みやすい。
飲む量は成人で、1日0.5〜1リットル程度。ただ、一気に飲むと、せっかくの電解質が十分に吸収されないので、少なくとも1時間程かけてゆっくり飲む。
いずれにしても、症状が改善しない時や不安があるときは、医師の診断を仰ぐようにしたい。