甘利氏の場合は早期の発見だったため近々に手術後、3〜4週間で公務に復帰するというが、舌ガン発症者・死亡者は増加傾向にあり、男女比2:1と圧倒的に男性が患う確率が高く、決して他人ごとではない。
いったいどんなガンなのか。世田谷井上病院の井上毅一理事長が説明する。
「口腔内を長期にわたって刺激する物、たとえば飲酒や喫煙なども舌を常に刺激するだけに、発症リスクが高まるガンです。しかし、舌ガンのような口の中の癌は、自分で見たり触ったりすることができるため、自覚症状も出やすい。舌の左右の縁にできる場合が多く、シコリができて2週間も治らないようであれば、すぐに専門医で診てもらうことです」
舌ガンにつながりやすい前癌病変に、舌粘膜が白くなる白板症がある。
「通常、舌の表面は平坦で滑らかな形状ですが、顆粒状の盛り上がりや平板状の隆起が見られる時がある。これらと白板症との区別が難しいケースもあるんです。しかし、白板症だった場合、ガン化する可能性が5〜10%あるだけに注意が必要です」(医療ライター)
井上氏が指摘するように発見しやすいガンのため、受診段階で“早期”の場合もある。その場合、90%は治るといわれているが、進行が早く頸部リンパ節への転移も多い。そのため、初回治療時にはなかったリンパ節転移が、舌ガンの治療後に発見されることも多分にあるという。
「治療の基本は、切除手術です。首の周囲のリンパ節に転移が見られる場合は、これも一緒に切除する。現在は技術向上により、切除範囲をかなり小さくして舌の機能を温存できるようになっています」(専門医)
2センチ以下の小さなガンなら外来で処置できる場合もあり、リンパ節転移のない早期の場合は放射線療法も可能だという。舌の異常には敏感になるべしだ。