京セラドーム大阪で行われたヤクルトとの開幕戦は、いきなりの延長戦となった。最後はルーキー近本光司などの活躍もありサヨナラ勝ちを収めたが、「崩壊の予兆」は1対1で迎えた9回表のマウンドにあった。勝ちゲームと同じく、クローザーを投入しなければいけない場面で、矢野監督がコールしたのは、一昨年のセーブ王・ドリスだった。この選択に疑問が寄せられているのだ。
「同点なので、延長戦を見据えて藤川球児(38)の投入も考えられた場面でした。藤川はオープン戦後半に打ち込まれるシーンが目立ち、クローザー争いから脱落しましたが、ここで抑えれば自信になったのに…」(スポーツライター・飯山満氏)
昨季後半、藤川に往年のストレートが蘇りつつあった。かつて「火の玉」と称された、ホームベース付近で浮き上がる軌道の直球だ。
本人も自信を取り戻したのだろう。「もう一度、クローザーに挑戦する」と意気込み、自主トレ期間はもちろん、キャンプ、オープン戦でも張り切っていた。
「投手陣はその姿に牽引されていました」(在阪記者)
だが、オープン戦終盤の失速により、藤川は“見切り”を付けられたのだ。
「矢野監督、金村暁投手コーチらが口にするのは『競争』です。ドリスに敗れたのかもしれませんが、チームに影響力の強いベテランを要所から外すと、他の選手は動揺します」(同)
思い出されるのが、金本知憲前監督とチームリーダー鳥谷敬の“関係崩壊”だ。’16年7月に連続フルイニング出場の記録が止まり、昨年5月に連続試合出場1939というプロ野球歴代2位の記録も途切れた鳥谷だが、後者の影響は、特に大きかった。打撃不振だったとはいえ、OB、フロント、関連企業も新記録達成を心待ちにしていたからだ。
金本前監督は「勝利至上主義」と反論したが、これで負けが込んでしまったのだから誰もかばえなかった。
「藤川は名球会の入会条件である日米通算250セーブに、あと23と迫っています。中継ぎをやっている場合ではありません」(同)
今度は、矢野監督が藤川の記録達成を止めようとしているのだ。阪神は功労者の晩節を考えないのだろうか。藤川をクローザーで使って試合に勝利するほうが、チームの結束力も高まっていきそうなもの。
「ドリスがコケたら、新加入のジョンソンをクローザーにするでしょうし、中継ぎの要所で使われるのは、桑原謙太朗と能見篤史。僅差となった開幕2試合に、藤川は出場していません。僅差では使えないと見られているのです」(球界関係者)
開幕戦、サヨナラのお膳立てをしたのは“窓際”鳥谷だった。意地の三塁打を放ったのだ。藤川も意地を見せなければ、消えていくだけ…。矢野監督のベテラン斬りは、崩壊の予兆か。