治療法として、北里研究所病院リハビリテーション技術部新井雄司理学療法士は次の療法を挙げている。
(1)炎症期(初期の疼痛が強い時)…肩を無理に動かさず、三角巾を当てるなど“肩の保温”を図る。
(2)拘縮期(肩関節が硬く固まる状態)…温熱療法=赤外線照射、マイクロ波、入浴、酵素風呂、温灸、ホットパックなど。
(3)拘縮が和らいできたら、ストレッチやゴットマン体操(アイロン・振り子体操)で、肩の運動を徐々に増やしていく。
そして新井氏は、ストレッチの具体例として、さらに3点を示す。
(1)手のひらを上に向け大きく外に回す(10回)。
(2)肘を曲げて手のひらを上に向け、肘は体につけたまま小さく外に回す(10回)。
(3)体の横で親指を上にし、動く範囲で腕を斜め後方に上げる(3回)。いずれも1日3セット行う。
痛みがひどい炎症期は直ぐにできないが、ヒアルロン酸などの注射や、温熱療法などで、痛みが和らいでいれば、(1)〜(3)の動きはスムーズに行えるという。
残るは手術だ。肩に麻酔をかけ、5ミリ程度の穴を4カ所開け、そこから4ミリの内視鏡を入れて行い、肩峰のトゲを除去し肩関節の癒着を剥がす。これで腱板の傷をきれいに治す根本治療となるため、拘縮肩の人は、腕も肩の高さ以上に上がるようになるという。
ところで、五十肩に糖尿病が関わっていると聞き驚かれる人は多いだろう。五十肩を研究しているある医療大学准教授は、調査結果をもとにこう話してくれた。
「手術する前には、血液検査などを行いますが、患者97人のデータを調べたところ、男性の3割が糖尿病でした。今は血糖値が基準値内で糖尿病でなくても、家系に糖尿病体験者がいる人まで含めると、5割近くが重症化する。また、心臓、肝臓、肺に異常がある人も重症化しやすく、腱板の傷も治りにくいことがわかっています」
いずれにしても、肩の痛みや動かしづらさを覚えるようになったら、早めに手を打つべし。「五十肩」といって甘く見ていると、後から痛い目に遭うことは確かだ。